コイバナ
恋花
「初めて話す人」
翌朝は昨夜の大雨が
まるで嘘のように晴れ渡り
白い入道雲が
青空にとても綺麗でした
みんなで手分けをして
張られたロープに
濡れた物を干したり
昼はバーベキューで
その準備をしたり
夕方には後片付けをして
キャンプを終わります
友だちが
「そのシャツ、誰のものか
分かった?」
私はまだ分からないと言うと
友だちは
「私が借りたこのシャツは
リーダーのだったの」と
言いました。
友だちは
リーダーのことが
密かに好きでした
私は「えー⁈すっごい偶然!
良かったね‼︎」と
彼女の手を思わず握って
言いました。
友だちは
「うーん…実は知ってたの。
クリーム色のシャツ
先週の公民館掃除の時に
リーダーが着てたの
見てたから」
照れるように笑って
そう言いました。
私は小さな声で
「がんばってね♪」と
言って彼女の肩を抱き
ました。
男子に借りた衣類には
名前やイニシャルは
ほとんど記されてなく
私が借りた
タータンチェックの
ボタンダウンのシャツも
まだ分からないまま。
**
お昼の
バーベキューの準備を
始めた時のこと
私のすぐ後ろから
「野菜、ここに
置いていいですか」と
男子の声がしました
私は何かを切っていて
顔は見ずに
「ありがとうございます
そこに置いてください」と
言いました。
「はい…」と
声がして野菜の入った
段ボール箱は
置かれたようです
すると
「あの…そのシャツ
似合っていますね」
と、その人は言いました。
私、今でも思い出すたびに
本当に可笑しくて
恥ずかしいのですが
私は「そうですか…
ありがとうございます。
でも、私のシャツでは
ないんです」
と応えてしまったのです。
すると
「あはは…」と笑って
その声の主は
行ってしまいました。
私は切っていた手を休めて
「ん?…え⁉︎
ちょっと待って!
今の人、もしかして
このシャツの持ち主?」
そう思って振り向いたら
もう居なかったのです
あとで友だちに言うと
大笑いされて
「なんだか京子らしいね
声だけでも分からない?」
私
「分からない」と。
友だち
「他にも持ち主が分からない
って言ってた人がいるから
リーダーに言って名乗り出て
もらえばいいよ」
私
「そうだね…」
バーベキューが始まって
男子がお肉などを焼いて
女子は焼けたものから
紙皿に取り分けて並べて行く
各自それぞれが
取りに来る
そうしている時に
1つ年下の
話したことがない人が
紙皿を取りながら
「流れ星に願い、しました?」
と私にいきなり聞き
ました
私は答えようがなくて
その人をじっと見て
しまいました
その人は
「僕は流れ星に同じ願い事を
いっぱいしました」と
言いました
私はまた答えようがなくて
黙っていました
すると
「願い事、さっき
叶ったんですよ!」
私
「え⁉︎それは…
良かったですね。
そうですか
本当に
良かったですね」
確かこんな風に
言ったと思います
するとその人は
「今も叶っているんです、今」
私……?
なんだか
よく分からないことを
言う人…と
私は多分無表情で
そう思ったのでした
つづく
・**・*・*・*・**・
小さな赤い唇で
みんなで楽しそうに
おしゃべり
しているみたい♡
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生