彼の精神科通院歴は十数年であった。

 

高校卒業と同時に就職のため上京。数十年エンジニアとして働き家庭も持ち、その役を終え帰郷したと言う。

 

しかし、彼のその姿はエンジニアには程遠い容姿。

 

いわゆる「肉体労働従事者」しかも体中に震えが見られ目つきは鋭く凛として私のデスクの前に立っていた。

 

椅子に腰かけるよう促し、紹介状に目を通す。

 

「本態性振戦&神経症→うつ病…」なるようになったという感じだ。

 

振戦系の精神疾患者を多く見てきた私だが、彼のそれには典型的な弱さが見受けられない。。。

「武者震い」と表現すべきか?彼を一見した私は恐怖に似た威圧感を感じた。

 

そしてこの印象を裏切るように問診した彼からは、紳士的で理性的とすら感じ、そして弱々しかった。