高い場所から飛び降りる遊びが流行ったことがある。一階の屋根、二階のバルコニー、二階の屋根となると、そこに立つと正直足が竦む。何年か前のある事件の関係者が、高いところから飛び降りるのを強いられて骨折の重傷を負い、それが元で人生が狂ったと新聞にあった。それを読んで思ったのは、あの遊びをしていたのは私たちだけじゃないんだということと、きっとあの遊びは人類が猿だった頃からあったに違いないと言うことだった。オスはとかく力比べ勇気比べをするもので、その順位で地位が決まる。猿ならもろそれが生存条件に関わるが、幸い人間はそうはならない。しかし猿の脳はオス同士の順位争いを止める方には働かないので、この遊びはきっと、いくら大人たちが禁止しても、未来永劫なくなることはないのだろう。
新聞やテレビの報道では、その子は飛び降りることを強制された、断ることが出来ずに飛び降りた、という意味の記事内容だったが、その記事に私はちょっと、同じ遊びをした者として、違和感があった。記者はどうだったのだろう。この遊びをしなかったのだろうか。私たちの場合は、飛び降りるのを断れないと言うことはなかった。次はお前の番だ、と言われてしり込みして、逃げ帰ったヤツだって当然いた、もちろん多くはなかったが。ちなみに私は飛び降りが得意だったので二階の屋根から飛び降りたことがある。公務員住宅のお調子者は三階のベランダから自分自ら飛び降りると宣言して登り、三階のベランダの上に立った。そこでさすがにその高さに危険を感じたのか、そいつは笑いに紛らしてその飛び降りを冗談だよ、にしたがった。しかし下で待つ私たちに囃し立てられ、止めることが出来なくなり、引き攣った顔で飛び降りた。何事もなかったからよかったものの、一つ間違えば大怪我だった。クラスのお調子者の地位を保つのは本当に命がけなのだ。
私はというと、二階の屋根は平気だったが低い塀から飛び降りたとき怪我をした。足がぱんぱんに腫れてこれは明らかに怪我という状況だったが、飛び降り遊びをして怪我をしたとはさすがに母親に言えず、じっと我慢して黙っていた。しかしびっこを引く私に気がついた母親は、ズボンを捲くってみな、というご命令、私は鬼のように怒られるのを覚悟して患部を見せた。どうしたの腫れてるじゃない。いや、ちょっと。どうしたのかって聞いてるのよ。だからさあ、よく覚えてないんだよ。覚えてないわけないだろ。だって本当に覚えてないんだから仕方がない。バカ。翌日骨接ぎに行き、亀裂骨折と言われた。その後この傷がなかなか治らず、都合一年近くも医者通いした。たぶん世界中で子供はこの遊びをしているだろうから、遊びが骨接ぎにもたらす売り上げも莫大で、神代の昔から合算すれば一兆円は下らないだろう。まったく下らない遊びが流行るものだ。
この遊びはオスの順位決め遊びだから基本女の子はやらないしバカにしている。しかしただ一人飛び降りが大好きな子がいて、この子は三階のベランダから苦もなく飛んであっさりと着地し、ああ気持ちよかった。忍者のような子はいるものだ。
「蹲る闇」
ー日常に潜む非日常、
不連続世界をめぐる四つの中編小説ー
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「月と星」
ー絹の街が紬出す愛と憎しみのサスペンスー
母が着た紅色結城は六道の迷い道
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真晴猿彦のブログ
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