何年ぶりだろう。
 鞦韆に乗った。両手を使わずに姿勢を保つ事が不安定で、勢いを和らげようと着く足も頼りない。

 ボクは識らぬ間に、鞦韆すら上手に利用出来なくなっていた。

 忘れたのだ。
 乗り方を。使い方を。
 他の忘れてしまった事物と動揺に、記憶と云う曖昧な基盤の上で完全に霧散した。
 既に思い起こす事は叶わぬが、消えてしまった記憶の中に、或いは忘却してはならない事も在っただろう。


 この事こそが契機だ。
 此処にボクによるボクの為の記録を始める。

 しかしながら、意味は無い。意義も無い。価値も無い。
 まるでこれは、ボクと云う在り方のようだ。