「星の王子さま」サン・テグジュペリ著
【こんなあなたにおススメです】
・おとなの方(できれば、ある程度人生を振り返れるほど生きてきた人)
・生きるとは?死とは? を考えたい方
※今回のレビューは、多少ネタばれに
なるかもしれませんのでご注意ください。
「死」とはなにか、が気になり
「星の王子さま」を読まなくては、と思い立ち
本棚に探しにいった。
この本を買ったもらったのは小学生の時だった。
当時妹が習っていたバレエの発表会を見に行くことになった。
バレエにこれっぽちの興味もない姉を付き添わせるのが
可哀想に思ったのか、親が一冊の本を買ってくれた。
退屈な時間を本でも読んで過ごしてね、ということだ。
それが「星の王子さま」だった。
童話といいつつ、
小学生の私には、この有名なお話の
どこか面白いのかちっともわからなかった。
今はわからないけど、もう少し大きくなったらわかるかな。
と本棚にしまい、
幾度の引っ越し、人生や環境の変化、断捨離にも耐えて
「星の王子さま」は本棚に鎮座し続けた。
時が経ち、大人になった。
その頃には
バラとの恋物語が理解できるようになっていた。
そして
「大事なものは目に見えないんだよ」
いくつかの言葉が胸に刺さった。
そして今回読み直してようやくわかった。
読者対象は、子どもではなく、
人生のいろんな経験を踏まえた大人が読むべき話だったのだ。
バラに失恋して旅に出て
あちこちの星をめぐっては
いろんな人との出会う王子さま。
名誉や社会的地位、所有を大切に思う人たち、
働くことに一生懸命で休む暇もない人。
あなたたちはなぜこの地球(ほし)に生まれてきたの?
生きることの意味はもっと別のところにあったはずなのに
思い込みや社会通念によって、
自分の本質を見失っていないか?
そして、
毒へびに咬ませて、
重たい身体を置いて、星に帰っていく王子さまとのお別れ。
「王子さまもこわかったのです。
それにまちがいありません。
けれど、王子さまはしずかに笑っています。」
静かに、地球でいうところの「死」と向き合う王子さま。
訳者のあとがきによると、井戸を探しに砂漠を歩いてく場面が
この作の絶頂とある。
人によっては、バラとの交流と考える人もいるかもしれない。
私にとっては、このラストの場面のほかない。
もちろん、人それぞれ、どう感じようと
どう受け取ってもいいのだ。
物語の奥の深さが、沢山の名場面を生んでいるのだから。
買ってもらった時から
随分長い時間がかかってしまったけれど、
やっと
星の王子さまと友だちになれた気がした。