大事な
大事な
大事な
最後の五分が失われて
もう、二度と
あの時間と
あの曲と
あの声を
失ってしまった
そう思っていた
そんな私に
アナタは
アナタタチは
あの時間と
あの曲と
あの声と
とてもよく似た箱を
私の前にそっとおいた。
最初の一回は
イチ
次の二回目は
サクラ
三度目からは
箱の中は空で
私が勝手に箱の中に言葉を入れた
二週間に一回
箱の中を覗いてみては
何度かアナタは
声に
声にしてくれたよね。
私の紡いだ言葉を
言葉通りだったり
アナタが組み替えたり
すっぱり半分吹き飛ばしたり。
私は幸せだった
どんな形であれ
私は幸せだった
でも。
いつだって
私を縛るのは
最後の五分という
時間
いくら私が
空っぽの箱の中に
言葉を紡いで入れておいても
青いノイズが邪魔をして
箱の蓋が開かれることが
だんだん無くなってきて
だんだんアナタが声にしてくれることが無くなった
嫌だ
このままなし崩しに
消え去るのは嫌だ
嫌だ
いやだ
嫌だいやだイヤダ
させない
諦めない
忘れさせない
私が言葉を勝手に入れて
入れ続けて
どんなに
青色のノイズが
箱を開けるのを
邪魔しようとも
私はソコに
言葉を入れ続ける
何のために
何のために
箱を作ったの!?
絶対に消させない
アナタが
アナタタチが
その柔らかな
柔らかな箱を
壊して捨てるまでは
何度ノイズが邪魔しようとも
けして諦めずに
言葉を
言葉を
言葉を
入れ続けるから
最初の三十分
その終わりの五分
空っぽの箱の中に
空っぽの箱の中に
最後の一人になっても
もうとっくに最後の一人でも
どんなにノイズが
ゆっくりと揺蕩うように
最後の五分に割り込んでも
私は
わたしは
ワタシだけは
言葉を入れ続けるのをヤメナイ
もう二度と
けっして
けっして失われたくない
大切な時間だから