不思議だった
不思議だった
不思議だった
私達と あなた
一人たちと 一人
並んで海の向こうの
まだ見えぬ夜明けを待っているよね
遠く暗い海の向こう
夜明け前の寒い潮風
私達とあなたはもうずっと待っているの。
長い長い夜
ずっとずっと待っている
長い長い夜
まだ夜が続く
長い長い夜
下がり続ける気温
長い長い夜
遠い夜明けが来るのを
ずっとずっと待っている
あなたはなぜ
この寒い、月のない夜に
特に震えるでもなく
かすかに微笑みながら
いつ登るかもわからない太陽を
待っていられるのだろう
何かを確信したその瞳には
月のない夜空が
漆黒の夜空が映っているはずなのに
私達と同じ
月のない夜空を
凍てつく海風を
私達と同じように見ているはずなのに
どこか余裕で
何か安心したような
その確信はどこから来てるものなの?
未来という闇の中に
あるべき安らぎを見いだせなくなった私達
同じ夜空を見ながら
きっとあなたは違う何かを見ているのね
私達には見えない
あなただけに見えている明けの明星が
太陽にすりかわって
眩しい陽光が春の輪廻を連れてくる
当たり前のサイクルを信じられなくなった私達
同じ夜空を
同じ凍える夜を
すぐとなりで過ごしているはずのあなたは
霜のはった
凍りつきそうな
私達と何も変わらないはずのあなたが
さも明らかな確信とともに
遠い未来が
既に見えているのだとしたら
あなたが私達を導こうとしているのは
誰の声を聞いて
誰の眼を借りたのかは知らないけれど
そこに何か今よりは多少温かい何かが
体を温める食べ物が
安らげる部屋が
あるって信じていいのでしょう
でも。
それでいてやはりあなたがもし
本当に未来という闇の中に
あるべき確かなやすらぎの他に
私達の願いの姿を目の当たりにした上で
少し離れたところで
導いてくれる手を差し伸べつつも
近づいてこないというのなら
やっぱりどれだけ時を重ねても
あなたと私達は
一人と一人たち
オシイレの外のあなた達は
遮るものなど無いはずなのに
手を伸ばさなくても触れられるはずのあなた達は
久遠の距離が縮まることはないのね
不思議だった
不思議だった
不思議だよ。今もなお。
闇に乗せて私を産みたいと言ってくれたあなたは
一人と一人たちが
二人たちになることのない
誰も届かない壁を作り続けるのは
なぜ?