フットハットがゆく! -64ページ目

(第125回)末端

 
 今回は『末端』について書く。なぜいきなり末端かというと、現在僕がかかっている病気からの発想による。
 前回も紹介したように、僕の左目は神経の障害で眼球が動かなくなっている。この病気にかかると、ものが全てふたつに見えてしまい、必然的に眼帯生活を余儀なくされる。過労とストレスによる『末梢血管』の収縮が神経障害の原因であった。

 『末梢血管』とはずばり血管の末端のことで、そこが縮んでしまうと酸素や栄養が神経に行かなくなり、障害を引き起こす。ちなみに、もし心臓や脳の末梢血管に障害が出たら、これは死に至る。僕は今37歳だが、40歳前後の働き盛りで昨日まで元気に仕事をしていた人が、突然過労死してしまうのも、これが原因である場合が多いと聞いた。末端といって馬鹿にしてはいけない。非常に大事なのだ。

 さて、僕を過労に追いやったお仕事の方だが、これも僕のポジションは末端である。僕は映像を作る仕事に携わっている。京都ローカルでケーブルテレビの番組やビデオを作っている。ビデオカメラで撮影し編集もする。
 僕の上にはプロデューサーやクライアントといった格好いい名前の偉いさんたちがおり、彼らが
「納品日を早めてくれ」
 といったら、徹夜してでも早めなくてはならない。
「予算をおさえてくれ」
 といわれれば、自分の生活費を削ってでもおさえなければならない。
 上の方が「楽してもうけよう」と思った分、下の方に負担がかかるのが社会の構図だ。また、上の方で未解決の問題を残したまま、下の方に仕事を放り投げてくる人もいる。そんなこんなで末端に負担がかかり、結局僕は病気になった。社会が破綻するのも、人体が破綻するのも成り行きはよく似ている気がする。

 そんな僕が今飼っている生物が、生態系の末端、『メダカ』である。去年の11月に実家から5匹貰って来て、それ以来すっかりハマっている。水槽も熱帯魚を飼うかのように装備しキレイにしている。メダカというのはボーッと見ていればただの小魚だが、じっくり見ると黄金色でとても美しい。いってみれば、線香花火のような感覚である。派手さは皆無だが、じっくりみればこれほど美しく可憐で慎み深いものはない…それが線香花火でありメダカである。
 そんなメダカであるが熱帯魚やにいくとだいたい1匹20円足らずで売られている。なぜそんなに安いかというと、他の魚の餌として売られているからである。メダカは魚類の生態系、食物連鎖の末端にいるので、他の生物の食料として扱われているのだ。末端だからしようがないとはいえ、この扱いは辛い。

 さて、昔貧乏で社会の末端におり、今業界のトップに躍り出たといえば、お笑いコンビ『ダウンタウン』の松っちゃんこと松本人志である。僕も末端を抜け出して松っちゃんみたいに出世したい!と思うことしばしばだが、もうええ歳やし、あせってまたストレスをためてもいけないので、ぼ~っとメダカを眺めて気持ちを癒すことにしている今日この頃…。

2007年1月16日号掲載 


松本人志
松っちゃん 1963~
日本を代表するお笑いコンビ『ダウンタウン』の松本人志の通称。

追記・・・なんかただのグチっぽいエッセイですが…こういう時もあります…(汗)


遺書遺書
(1994/09)
松本 人志

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