-僕は死神ですが、何か?-
今日、12月31日は僕、出雲真琴(いずもまこと)の16回目の誕生日だ。
去年の中学3年生で受験生であった僕の誕生日は無残にも勉強で終わった。
その甲斐あってか、僕は無事第1志望校の私立天道高等学校に入学できた。
そして今日、僕が迎える16回目の誕生日に、友達が年越しついでの誕生会を
開いてくれるという。
去年楽しめなかった分楽しむつもりだった。
そう、楽しむつもり『だった』。
誕生会に向かう僕は『死んだ』。
ちゃんと信号は青だったはずだ。僕の見間違いなんかじゃなかったはずだ。
それは僕の後ろを歩いていた男の人が証言してくれるだろう。
― 僕は信号無視のトラックに轢かれ、16年という短い人生を終え、死んだ。
はずだった。
「いやぁ、人間さん、不運でしたねぇ」
死んだはずの僕の目の前には、黒装束の見た目中学1年生ほどの女の子が
立っていた。
フードを深くかぶっており、口しか見えない。
ここはどこだろう、あたり一面果てしなく―暗い。
「こちらとしては人間さんの後ろを歩いていた男性を殺っちゃうつもりだったん
ですが」
そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべる。
どういうことだ?こいつは何を言っているんだ。
殺っちゃう?殺すってことか?
「あれれー?こいつは何を言っているんだ。とでも言いたげな表情ですねー」
不適な笑みを浮かべている彼女は首をかしげた。
「そうですよ、殺すつもりでしたよっ」
もやはその笑みは不気味としか言いようがない。
「僕はいったいあの後どうなったんだ?確かに轢かれて、死んだはずだ」
そう、最大の謎。僕は確かに死んだはずなのだ。
あの轢かれた瞬間の感触は今でも鮮明に脳に焼き付いている。
死を確かに実感した。
「そう、確かに人間さんは死にましたよ?」
だからなんですか?、と彼女はそう言って笑った。
「だからなんですかって、じゃあなんで死んだはずの僕が生きているんだ!」
夢なのか?これは夢なのだろうか。
「夢じゃぁ無いですよ。人間さん。」
彼女はさっきまでの笑みが嘘だったかのような、そんな冷めた目で僕を見つ
めて言った。
「確かに人間さんは死にました。生きていませんよ。トラックに轢かれたじゃな
いですか」
あなたは死んでいます。彼女はそう僕を指差して言った。
「だから、こちらも困っているんですよ。殺す対象を間違えたんですよ。人間さ
ん、出雲真琴さんを殺そうとはこれっぽっちも思っていませんでした。」
だから、不運でしたねぇと最初に言ったじゃありませんか。そう彼女は言った。
名前を知られていた。
始めて会った人のはずだ。なのに―
「名前を知られていた」
不思議ですか?と彼女はそう言って笑った。
僕の考えていることがわかるのか?さっきから何度も僕の考えを読まれてい
たし。
「あなたの考えていることなんてわかりますよ。出雲さんの考えていることな
んて」
簡単です、そう言ってまた不適な笑みを浮かべる。
「お前はいったい、何者なんだ?」
思えばあの時、こんなことを聞かなければ、僕は楽に死ねたのかもしれない。
「僕は死神ですが、何か?」
彼女は微笑んだ。
→つづく。