ぐぐぐぐ~~~~~っと遡って、先月のお話
十五夜と十六夜の二晩、
あまりに月が綺麗すぎて、ノックアウトされてしまいました。
あんな綺麗な月を見ていると、
音楽を感じずにはいられません。
世の中に月を描いた有名曲はいくつもあれど、
この二日間、夜空を眺める私の心に鳴り響いていたのは、
こちらの曲でした。
ゴールドベルク変奏曲
バッハ作曲
バッハをこよなく愛する私にとりましても、この曲は最高峰。
なにしろ、この曲の作られた理由が、
不眠症のために、なのですもの。
心を鎮めるのに、これ以上の曲はなし
曲の冒頭に出てくるアリアが、こよなく美しく、澄んでいます。
まるで、大気圏を突き抜けて、宇宙に漂っているような静謐さ。
もし、宇宙に音楽が存在するとしたら、こんな音楽に違いない、と私は思うのです。
宇宙には、ボリュームたっぷりに、自己を歌い上げる音楽はふさわしくありません。
最近では、是枝裕和監督、福山雅治主演の映画、
『そして父になる』の エンディング曲として使用されておりますわね。
かの、レクター博士もお気に入りでしたわ
この方ですわ。
羊たちの沈黙に出てくる、猟奇殺人犯の博士、ですわね。
名優、アンソニー・ホプキンスが怪演しておりました。
でも、私的には、こちらのドラマに使われていたのが嬉しかったです
韓国ドラマ、雪の女王
切なさと、一途さと、痛々しさの混ざったこのドラマで、
ゴールドベルク変奏曲のアリアが、とても静かに胸を打って流れていました。
今回ご紹介する演奏は、
奇行で有名だった、カナダのピアニスト、
グレン・グールド。
彼のゴールドベルクの録音は2種類ありますが、こちらは晩年のもの。
テンポがゆったりと、一音一音を踏みしめるようなこちらの演奏の方が、
レクター博士にも、
恋物語にも、
そして宇宙にも似合っていると思います。
ぜひ、目を閉じてお聞きになって下さい。
あなたには、レクター博士の見通すような視線と、
福山君の眼差しと、
はかない恋に捧げる切ない瞳のどれが見えるでしょう
わたしですか
うふふ。
私には何れでもなく、やはり、宇宙が見えます
……いえ。
そのどれをも包み込んで、遥かかなたで響く、永遠の何かでしょうか…
所詮、下界のことは、一時の現象でしかなく、
何が起ころうとも宇宙は静かに拡散し続ける……。
そんな厳かな気持ちになる一曲です