1. 到着と異様な入口

東京都町田市にある「西山美術館」。ここはロダンやユトリロの作品を所蔵している個人美術館として知られている。しかし、実際に訪れてみると、美術館という枠組みを超えた異様な空間であることが分かる。

小田急線鶴川駅からバスに乗り、10分ほど揺られると、『西山美術館』と大きく書かれた看板が視界に入る。入り口には武家屋敷風の門が構えられており、ここから既に美術館のイメージとはかけ離れた空気が漂う。庭を横目に階段を上ると、新興宗教を思わせる幟が目に入る。一瞬、足を引き返そうかと思ったが、ここまで来た手前、先に進むしかなかった。


2. 高額な石と黄金のロダン像

建物に近づくと、時価2500万円の石が置かれた自宅が現れる。美術館は隣の建物にあるというが、建物群全体の異様さは一目で分かる。敷地内には世界最大のローズクォーツの球(ギネス認定)が祀られ、その他にも高価な石が無造作に並べられている。ハート型紅水晶は1200万円、黄金のロダン像は3000万円。

ロダンの本物が所蔵されているにもかかわらず、なぜか美術館の前に黄金像が置かれている。美術館の構造と展示の意図は理解しにくく、混乱を覚える。


3. 入館と「金運アップ」の水晶

受付で入館料を払うと、チケットとパンフレットとともに謎のメダルが渡される。さらに、「好きな水晶を2粒選んで財布に入れると金運が上がる」と説明される。来館者は美術鑑賞を目的としているはずだが、なぜか金運グッズを手渡されることになる。


4. 館内の奇妙な体験

館内に足を踏み入れると、さらに石の存在感が強い。触れることでパワーを得られると説明されており、手当たり次第に石に触れると、作品鑑賞より石体験に気を取られる。

ロダンの彫刻がようやく姿を現すが、展示環境は特殊である。螺旋階段の下に設置され、「頭上に注意」の張り紙がある。警告の対象は来館者ではなく、作品自身なのか判断がつかない。作品の印象は石や建築物に埋もれがちである。


5. ユトリロ館への入場とメダル制

館内の多くのスペースは入館無料で利用できるが、ユトリロ作品が展示される「ユトリロ館」に入るには、受付でもらったメダルが必要になる。入館料制ではなく、メダル制という独特の仕組みで、展示室に入る権利を得る形式になっている。

館内に貼られた美術館のポスターも、一般的な美術館のデザインとはかけ離れている。フォントやレイアウトは統一感がなく、地方の中古車販売店を思わせる雑然とした印象を受ける。美術館というより、個人のコレクション展示の延長線上にあると理解したほうが正確だろう。


6. 美術館としての評価

全体として、西山美術館はロダンやユトリロの作品を目当てに訪れても、展示環境や周囲の石や装飾の強烈さにより、純粋な芸術鑑賞がしにくい構造である。高額な石や黄金像、金運メダルなど、展示以外の要素が極端に目立ち、来館者は美術館というより、異世界に迷い込んだような体験をする。

この美術館は、作品の価値を直接伝えることよりも、所有者の意向や装飾、体験型の要素が優先されている。一般的な美術館の展示形式に慣れた者にとっては、鑑賞の流れや焦点が理解しにくい構造である。


7. 結論

西山美術館は「美術館」と呼ばれるが、芸術作品と異物的要素が混在した空間であり、鑑賞の目的と手段が複雑に絡み合っている。ロダンやユトリロを目当てに訪れる者は、作品の存在だけでなく、奇妙な石や奇抜な演出に巻き込まれる覚悟が必要である。美術館の概念から外れた体験を提供する施設として捉えたほうが、理解しやすい。

 

西山美術館
東京都町田市野津田町1000