それは、なにかの病気で入院していた方が、病状の悪化で足が壊死しかかって切断したけど、さらに悪化して腕も切断した。
その方が『足までは生きよう、頑張ろうと思っていたけど、腕もなくなって、さすがに生きる気力がなくなった』とおっしゃっている、というものでした。
子供心に『なんて怖い話なんだ!』と思って、よく覚えていまして、『わたしの未来』の主人公の葵ちゃんのカレ、ハルくんの話に使わせていただきました。
このお話は多分に『かわいそうな話』だと思いますが、大きな禁じ手がありまして、主人公の葵ちゃん自身が自分のことをかわいそうだと思っていたら成立しないということです。
もう一歩踏み込むと、葵ちゃんはハルくんのこともかわいそうだと思っていては成立しません。
作品全体が描くことと、俳優が描くべき人物とは別の話であるというのは、俳優が一人しかいない一人芝居でも同じです。
西原さんには深い共感力があり、ストーリーに共感してくれればしてくれるほど、テリング(描写)の部分で立ち往生する場面が何度かありました。
けども、稽古場で何度も何度も葵ちゃんの人生を生きてくださる中で、リスペクトに満ちた葵ちゃんの人生をつかんでいきました。
やはり演じ手が悲しみに吞まれてしまっては、作品は成立しません。(最近、そんな作品をたまたま2つ観て、いかがなものかと思っています)
『涙たたえて、笑顔』な葵ちゃんの立ち姿に深い共感があると思うのです。
そして、西原さんは見事に葵ちゃんとして、舞台に立ってくださったと思っています。
続きます。
