先週末の日曜日に滋賀は水口で観てきた、
メロンオールスターズの客席での話。
大阪からだと、新快速で草津まで行って、
草津線に乗り換えて、貴生川で近江鉄道に
乗り換えて、まぁ、やっとこさ着く。
そんな会場。
開演15分くらい前に、おばあさんが一人で
やってきはって、
このおばあさんが『社交的』な方で、
近くの席のボクや他の人に、話しかける、
話しかける。
大阪から来たら、だいぶ遠かったらしく、
「4回も乗り換えた」と、何回も聞かされる。
かなり不満だったらしく、何回も聞かされる。
そのうち(ボクも含めて)みんな聞いてくれなく
なったら、一人でもブツブツ言い続ける。
曰く「もう、早くやってもろて、早よ帰えらな」
いやいや。早く始めてはくれないですから。
心の中でつっこむ。
開演の14時頃になると、イラつきがピークに
達してきたらしく、
「はじまらん…」、「いつ始めるねん…」
と、よく通る声でつぶやき始める。
が、実は既にパフォーマンスは開始されていて、
会場にはダンサー・パフォーマーたちが現れている。
つまり、ある意味、始まっているわけだ。
しかし、おばあさんには、それが始まりとは
認識できないらしく、
「もう、14時やで…」
正確には14時に5分前くらいなのだが…。
「時間厳守やっ」「こんな遠いとこで…」
遠かったのが、かなり不満らしい。
「時間厳守してもらわな」
既にパフォーマンスを開始してる、
ダンサー・パフォーマーにも絶対聞こえている。
というか、ボクはそっちに集中したかったので、
「これは、もう始まってるんですわ」
と、一回だけ声をかけてみたが、
おばあさんには理解できないようで、
「キョトン」と「不満」の間みたいな表情。
あまりの、おばあさんの存在感に
(また、最前列の中央に座ってるんだ)
これは、ひょっとしたら演出の一部なのか?
と疑い始めた頃、14時を少しまわってしまい、
おばあさんが、一言おおきな声で、
「たるんどるっ」
さすがに、ちょっと吹きだしてしまって、
なんか、もう、どうでも良くなる。
そうこうしているうちに、
パラパラとバンドの方々が現れ始める。
ゆったりと。
まぁ、それも作品の一部なんだろうし、
ボクにはいい感じなんだけど、
おばあさんには許せなかったらしく、
「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ」
と言いながら、バンドのセッティングをせかす
手拍子を始めてしまった。
さらに、どうでも良くなる。
そして、暗転してオープニング、
カッコイイ☆
しばらく、おばあさんのことを忘れていたが、
不意に思い出して、チラっと見ると、
寝ている。
なにしに来たんだ。
と思ったら、すぐに目を醒まして、
「わからん…」とか、つぶやいている。
演奏が大きくなったら、耳を押さえている。
これが演出なら、かなり面白い。
最後はおばあさんがおもむろに客席から
踊りだすんじゃないだろうか、
なんて、考え始める。
そのうちに、満月動物園でもおなじみの
殿村ゆたかさんが、着流しで
日本刀を振るいながら登場。
後ろに黒子がついていて、
スモークマシンで煙を炊きながら、
殿村さんについていく。
カッコイイ☆
しかし、おばあさんには煙たかったらしく、
受付で渡されたチラシで、
バサバサ音をたてながら、あおぎ始める。
おばあさん、完全に作品と一体化してるよ。
そして、ついに煙に耐え切れなくなったらしく、
おばあさん退場。
会場の隅っこで観ていた受付の方が
案内して一緒に出ていく。
おばあさんがいなくなって、
なんだか、ちょっと寂しくなっている
自分に気がつく。
舞台はどんどん続く。
カッコイイ☆
すっかり舞台にのめりこんだ頃に、
そっと受付の人が会場にもどってくる。
えっ? 今までおばあさんにつかまってたの?
おばあさん、出て行ってから、だいぶ、長いで…。
終了後、受付の方にそっとお聞きしたところによると、
バンドの方が普段演奏してはるお店でチラシを見て
観に来たらしく、
おばあさん的には、ジャズのライブだと思って、
来てたらしい。
ジャズのライブだと思って、
アングラの舞踏を観せられたら、そら、
おばあさん、かわいそうだ。
おつかれさま、おばあさん。
そして、間違いなく、帰りの電車の中でも、
だれかれとなく、今日あったヒドイ出来事の
報告をされていたことは想像に難くない。
しかし、あの「たるんどるっ」は忘れられん。
そんなこと言われたら、満月動物園の芝居なんて、
ほとんど「たるんどるっ」始まり方しかしてへんし。