如月です。
 
 

さて、ここから先は私の理解力と知識の限界が近いですので、細かい所はどうぞ金融工学書や専門書(あるのか知りませんが)をご参照ください。また間違いや勘違いや嘘の責任も取りませんが、可能な限り分かりやすく事実の概要を綴れたらと思います。

ディスクレーマー終了
 
前置きが長くなりましたが、デルタワンという部署のデルタ君の話です。
あまり近くないのでデルタさんというイメージですが。
 
会社によっては私と違って花形扱いされることが多く、収益も大きい所があります。
何しろ動かす金額が数百億~数兆円という、桁違いなサイズですので、当然収益も増えます。
ただ、この金額の中身が全て株かというとそうではありません。
 
デルタ君の収益源はベーシスです。
 
先物やスワップ(相対で取引する先物のようなもの)が割高で取引されていると、それを大量に売って、同額原資産を買います。
例えば今日経平均(原資産)が20000円で取引されており、20005円で日経平均先物が売れて20000円で原資産(株)が買えると、決済日までに5円(0.025%)の儲けになります。
微々たる利益率ですが、金額を増やせば収益の絶対額は増えます。
 
同じようにETF、配当先物と言ったバリエーションや、指数もいろいろありますので、ベーシスが開いた(=ミスプライス)状態の商品に絶えず資金を移し替えていくイメージです。
開いた状態で保有できれば、決済(SQ)まで持ちきれば収束して利益になります。
この原資産の残高は裁定残高と呼び、頻繁に日経などに取り上げられています。
書いた通り、先物等売りと同額の原資産買いを保有した状態ですが、これを保有するデルタ君が市場を動かす要因にはならないでしょう。何故ならデルタ君はデルタを持たない(原資産を売ったらその分先物を買う)ので市場へのインパクトはゼロです。
よく日経が裁定取引を市況の説明に使いますが、動かしているのはデルタ君ではなく、先物のみを取引しているCTA等が原因の一つのようです。
 
いきなりデルタとか書いてますが、デルタとは原資産(通常は市況)との相関というイメージでいいと思います(厳密な定義はググってください)。
TOPIXが上がったときに、保有資産が変動しなければデルタはゼロということになります。オプションのようにTOPIXが上がったときに評価価値が幾分か(ストライクによる)上がる場合は可変のデルタを持つことになります。
そして、原資産が1%上がったときに、保有資産が1%上がるものをデルタが1の資産と呼びます。指数のバスケット(株)や先物、ETFやスワップなどがそれに当たります。
つまり、デルタが1(ワン)の商品を取り扱う部署をデルタワンと呼ぶわけです。
なのでオプションは管轄外のはずです。
 
鞘抜きのような堅実な印象がありますが、スワップ等は決済日まで長く、短期の先物ですら金利や配当の変化によりベーシスが動くと損益が大きくぶれます。
このベーシスを上手く扱って稼ぐのがデルタ君の仕事です。
バスケ君の仕事で出てきたEFP(exchange for physical)も原資産と先物の疑似裁定ポジションなので、ベーシスがわかるデルタ君の助けが必要になります。
また日銀のETFも先物とETFのスプレッド取引ですので、デルタ君のベーシスが頼りとなりそうです。
 
先物が絡むとデルタ君大活躍ですね。
 
ただ、原資産の銘柄数が多く、しかも個別銘柄のリスクは極力取らないため、決算がどうなろうが株価が暴落しようが、デルタ君の懐は痛みません(=知ったこっちゃありません)。
 
莫大な自己資金と様々な知識が必要な上、お客さんと絡むことも少ないので勝手に自己完結しているトレーダーが多い印象です。説明してもらっても専門用語や曖昧な表現が多くてよく理解できないし(え、私の理解力のせい?)、そもそも社交的ではない人が多い気がします。
なんかボーナスいっぱいもらっていて周りを見下しているイメージあるし。
 
先物市場に貢献してくれているデルタさんにも感謝しつつ、最後エキゾ君に挑みます。
 
今回が知識の限界スレスレなら、次回はもう妄想上の話になってしまうような…

如月です。

 
さて、前回に続きファシリテーションの話です。
個別株のエクセ君は一応倒した(?)ので、今回はバスケ君の出番です。
バスケ君はその名の通り、バスケット(複数銘柄を集めたもの)の客取引を担当するトレーダーです。
 
バスケ君の担当はバリエーションが多いです。
 
・VWAP
・引け値保証取引(引けギャラ)
・リスク型バスケット
・EFP(先物とセットのバスケット)
 
ご覧の通り、いろいろあって、何やらめんどくさ複雑そうです。
 
1つずつ行きます。
 
VWAP
出来高加重平均価格を保証する取引。Σ(売買額)/Σ(出来高) つまり当日の売買金額(価格×数量 of全取引)÷当日出来高で計算される価格がターゲット。
これに対して価格(0.0x%)(まぁ手数料やコストみたいなものでしょうか)を提示し、ダン(約定)したらアルゴに入れてヘッジします。当然VWAP値とずれる(理論上は負ける)ので、0.0x%より損するとバスケ君の出血(損失)。
 
引けギャラ
終値を保証する取引。終値に対して0.0x%(手数料)とか提示し、ダンしたら引成注文を入れます。引けたら手数料の儲け、引けなければ(ザラ場引け)バスケ君がリスクを背負います。
バスケ君(というか所属部署?会社?)のスキルによっては、引け専用のアルゴとか持っているようですが、細かくは知りません。知ったかぶりはしない、知らないものは知らない。
ただ、インパクトは考慮しなければならず、価格形成に大きく影響を及ぼしそうな場合は配慮が必要など、バスケ君の手間とクビリスクは小さくありません
 
 
リスク
直近の取引価格を基準にする取引。上記2つはダンした時間より後に決まる価格が基準になるのに対し、こちらは直近(過去)の取引価格が基準になります。なので事前に対応(ヘッジ)が出来ず、提示する値段も毎回異なります。
分かりにくいので、例を挙げますと朝(9時前)に「昨日の終値でA株2億円買い、B株とC株を1億円ずつ売りたいんだけど、いくら?」と言ったリクエストを頂き、バスケ君にプライスを聞いて例えば「じゃあ0.8%でお願いします」とお答えします。ダンした瞬間は0.8%の儲け(昨日の引け値対比)が出ますが、A,B,C株が寄り付いてアンワインドする価格によっては一瞬で全部吹き飛んだりします(ひどいときは大損)。1番プライシング(価格付け)の難易度が高そうです(実際は数十~数百銘柄で同じことをやります)。
バスケ君すごいですね…
 
EFP
次回のデルタ君で少し出てきますが、要はバスケットと先物でデルタが打ち消し合うようなセットバージョンの注文。リスクと違い、一応先物と原資産が合致しているものが多く、価格リスクはそこまで大きくありません。例えば「TOPIXのウェイト基準で1000銘柄で計100億円の株の買いと、100億円分のTOPIX先物売り」的なセットみたいなもので、昼休みとかに来たら基準値は前場引値とか。これに対してトラッキングエラー(?)とか先物のベーシスやらなんちゃらでプライス(手数料)を計算します。こちらは全部アンワインドする必要なく、トラッキングエラーのみを調整する感じです。詳しくは知りません(この辺の勉強足らない…)
 
 
バスケ君と紹介しましたが、この数のバリエーションなので基本は複数人で行ったりしているようです。難しそうですし、結構大変そうですね。
 
バスケ君もエクセ君と同じで、能動的にリスクを取るわけではなく、基本お客さんからバスケットのリクエストが来て、それに対し価格を提示、ダンしたらヘッジというお仕事なので、メインの利益は手数料になると思います。
 
あまり深入りしても理解できそうにないので、バスケ君には敬意を表しつつ、次のデルタ君に行ってしまいましょう。私の知識も記憶もそろそろキャパオーバーです。
 
こんな超ニッチ過ぎる話、興味持つ人少なすぎるような…
過去の記憶を辿っている如月です。
 
 
証券会社時代のトラウマ思い出を掘り起こしながら、各トレーダー達の業務内容的なものを書き綴っていきたいと思います。
尚、各会社により体制、役割や用語が異なりますので、ここでは一般的な例として読んでいただければと思います。
 
さて、今回から株式のファシリテーションのお話です(二部作)。
 

ファシリテーションには大きく2つあります。

それは、個別株バスケット(複数銘柄)。 
 
「いやいや、バスケットも所詮個別株の寄せ集めでしょ?」
 
その通りなんですが、トレードの性質、アンワインド方法や手数料まで大きく異なるので、一緒くたにすることはできません。
個別とバスケットをまとめて見る所もありますが、細かく見ていくと一人では到底回しきれません。
取引する時間帯も、使う用語も、向かい合うお客さんも違うので、大体の会社はトレーダーを分けている印象です。
もちろん年収も違…(殴
 
個別株のファシリテーショントレーダーはいろいろ呼び方があります。
また、同じ呼び方でも会社によっては異なる業務を指すケースがあるので、とりあえずこの人をエクセ君と呼びます。
(業界の人に「エクセ君」と言っても一切通用しないどころか、変人扱いされて相手にされなくなるのでご注意ください)
 
エクセ君のお仕事は個別株の客取引です。以前軽くお話しましたが、今回はもっと具体的に書きます。 
 
あるバイサイドのお客さんC(client)、証券会社営業S(sales)、証券会社エクセ君の3人がいます。
以下の会話で流れを掴んでください。
 
C→S「Sさん、今A株を10億円買いたいんだけど、オファーいくら出る?」
S→C「少々お待ちください…(保留)」
S→エクセ君「エクセ君、A株10本(=億円)買いたいんだけど、どの辺いけます?」
エクセ君→S「んー、今だと1510円だけど…客誰ですか?」
S→エクセ君「○○です。」
エクセ君→S「手数料いくつでしたっけ?」
S→エクセ君「△△bps(1/100%)です」
エクセ君→S「じゃあ1509円で!」
S→C「お待たせしましたCさん、1509円でオファーできます」
C→S「じゃあ、それ買います」
S→エクセ君「ダン(約定)で!」
エクセ君:Cに売った分を無事1508円で買い戻す。
 
 
言語は日本語だったり英語だったりしますが、基本的なやり取りはどこの会社も似たようなものです。
 
この場合の収益源は、手数料(△△)と、約定価格vsアンワインドコスト(この場合は1509-1508の1円分)になります(マイナスにもなりうる)。
手数料は約定金額にかかるもので客毎に異なります。
 
ご察しの通り、アンワインド中(エクセ君が買い戻してる最中)に株価が暴騰してしまうと損失となります。
アンワインドはマイナスになることも多々あり、手数料でカバーしきれない場合もあると聞きました。
 
似たようなお仕事でVWAPという日中の出来高加重平均価格を保証する取引もありますが、ほぼ同じなので割愛します。
 
デイトレーダーのような印象がありますが、1日で捌ききれない(買い戻しきれない)約定があったときは、他の株でヘッジしたり(流動性が大きい似たような値動きのB株をとりあえず買っておいて、ゆっくりAとBを同時に外していく)、先物(日経やTOPIX)でヘッジしておいて数日かけてアンワインドしたりと、宵越しのポジションを持つことがあります。こういうポジションは大抵損益が大きくぶれます。
 
また他にも
エクセ君「そういえば客のCさん、D株も買いたいかもしれないから、とりあえず私が今日買っておいて明日くらいにSさんに聞いてもらおうかな」と先にポジションを作っておくこともあります。(もちろん合法)
当然このポジションから来る損益もエクセ君の責任です。
 
こういう工夫はエクセ君のスキルに依りますし、エクセ君の上司やチームの方針に依るかもしれません。
部署間(トレーディングvs営業)の政治に巻き込まれるのを何度も見たことがありました。
 
まぁこんな所で、次はバスケ君(バスケットファシリテーション)です。
 
バスケ君の話はかなり手強いような…