真昼なのに昏い部屋/江國 香織
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なんせまず装丁がかわいい!

外国の子供の絵本のような雰囲気を意識して書かれているということで、文体や表現もおとぎ話のようにかわいらしい。だけど内容は大人の不倫のはなし。どろどろな出来事とファンタジーな雰囲気のミックスがなんともいえません。

主人公の美弥子さんはまさにおとぎ話の主人公にふさわしいような小鳥のように可憐な女性。

家事や、嫁としての色々な役割を丁寧にこなし、毎日きちんと生活することにしあわせを感じていた主婦です。そして、恋のお相手となるのがこれまた穏やかでいい感じのジョーンズさん。2人は子供のようにピュアでしあわせなひとときを過ごします。とてもそれは「不倫」だなんて汚らしいものには思えません。

が、美弥子さんは「世界の外に出てしまった」と感じるようになります。それまでの守られていた世界の外に。今まで自分を取り囲んでいた何もかもがそれまでとまったく違って見え、美弥子さんは驚きます。ジョーンズさんは、それを「真理を発見したということだ」といいます。

美弥子さんは一体どうなってしまうんでしょう。

最後の3行がなんとも残酷です。女としてはぞっとします。だけどあれこそ男性の真理ですね。

表紙の絵も、一見すごくかわいいんですが、よく見ると不穏な感じ。美しくも残酷さが秘められているのが大人のおとぎ話ですね。



わりと意味不明




なんかすごくけなげに頑張ってる感じがします。

気がついたらこんな風になっていたんですが(たぶんやったのは母です)、見事な組み合わせ過ぎて笑ってしまいました。

ガールフレンド・エクスペリエンス/バブル [DVD]/サーシャ・グレイ
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けっこう前から気になってたやつなんです。高級エスコート嬢のドキュメンタリー風映画。それもアメリカで一番人気のAV女優主演ってことで、どんな感じなんだろうって思ってたんですが、すごく淡々としたもの静かな映画でした。特にAV女優らしいようなシーンもなく。むしろ女性向け?な感じでした。本当にただエスコート嬢の日常を淡々と描いている、空気で感じろ的な映画なので、はっきりしたストーリーがある話を好む人にとっては退屈極まりない映画だと思います。雨の日に一人でふらりと寂れた映画館でマイナーな映画を観るのが好きって人は見て損じゃないと思います。そんな感じの映画でした。


1回2000ドルの高級エスコート嬢ということで、相手はお金持ちの男性ばかり。エスコート嬢なので性的奉仕以外にも、映画に行ったり、食事に行ったり、ひたすら話を聞いてあげたりと彼女っぽい役割を演じます。結構売れっ子な感じですが、自分と似たような雰囲気のライバルが出てきたり、もっとネットで売り込んだほうがいいのかなと悩んだり、エロティック批評家というよくわからん人からアドバイスされたり、一般のお仕事をしている女性と同じように仕事に関しては悩んだり焦りを感じたりします。そして普通の女の子らしく恋にも悩みます。彼女にはびっくりなことに、彼女の仕事を承知の上で付き合っている彼氏がいるんですが、さらにびっくりなことに、彼女はある日出会った顧客に運命的なものを感じて、その人と旅行に行く!と彼氏に宣言したりします。なんか彼女、人格学?とかなんとか言うスピリチュアル的な本の信者で、その本によると彼女とその顧客はかなりイイ感じらしい。もちろん彼氏は大激怒。俺は体を売ってるお前を見てるだけでも辛いのに我慢してんだぞとか、そんな大して知りもしないやつの為に二人で築いてきたものをぶち壊すのかとか、家族もちの男なんてどうせ遊ばれるだけに決まってんだろとか、もっともな怒り方をします。けど結局は自分の信頼する本を馬鹿にされたことに一番腹を立てた彼女は、週末旅行を決行しようとします。が・・・彼氏の言ったとおり彼は来ず。「電話で娘たちの声を聞いて涙が出た。家族の元へ帰る」という電話だけがかかってきます。泣きたいのはこっちだよって感じです。


そんなこんなで、若くて美しく、大金を稼ぎ、高級なものに囲まれる彼女も割と踏んだりけったりなんだよってところにおそらく女性は何か感じるんじゃないでしょうか。高級エスコート嬢というとかなり自分と遠い存在のように思えてしまう人が多いと思いますが、恐らく意図的なんでしょう、そんな特殊な環境にいるにもかかわらず、彼女は割りとフツーの女の子っぽく描かれています。私は彼女の静かな佇まいと、ものすごい美人って訳でもない普通にその辺にいるきれいな子って感じの顔立ちがなんか好きでした。なんか雰囲気的にAV女優って感じじゃないように思えます。本業じゃすごいのかもしれませんが。軽く見てみたい気もしますが。ああでも、Tバックがすごく似合っていたな。うん、そして何より何故かスピリチュアル好きっていうそういう変なところにも惹かれます(笑)



そして、なんかもう一本映画がついてるなって感じで何気なく観た『バブル』。

なんかこっちの方が反響がいいみたいです。田舎の工場に勤める3人を中心に人間関係や心の歪みが描かれていて、殺人を巡るサスペンス的な要素もあります。『ガールフレンド・エクスペリエンス』よりははるかにストーリーらしいストーリーが存在しています。なんかかなりの低予算でつくられているみたいで、その割にはかなりすごい!ていう風に高評価になっているみたいです。うん、確かにそんな感じで、よくできてるなって感じです。ものすごく面白いって訳ではないですが、けっこう面白かったなって感想をほとんどの人が持ちそうな感じ。


二人暮らしをしているお父さんの介護をしながら、工場で働き、地味な生活をしている中年の女性。彼女の「親友」は同じ工場に働き、彼女と同じく味気ない日々を過ごしている結構イケメンな青年。彼女は彼とお昼ご飯を食べたり、話をしたり、彼の送り迎えをしてあげたりしています。が、その工場にある日、彼と同じくらいの年齢の女が入ってくる。当然互いを意識しあう青年と若い女。そして、そんな二人に視線をやる中年女。3人の微妙な関係がここから始まります。『ガールフレンド・エクスペリエンス』と同じく淡々と静かに話は進んでいきます。「視線」で成り立っているような作品です。その分、殺人という結末がなんとも衝撃的。青年はぱっとしないけど素朴なイイ感じの男で、若い女は性格が悪くて手癖も悪いっていうイヤな女。中年女はでも何も言えない。恋愛にまで発展させようという気持ちはないだろうけど、明らかに青年のことがすごく好きな中年女。そんな彼女の心の闇がすごくわかる気がしてしまって恐いです。