真昼なのに昏い部屋/江國 香織
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なんせまず装丁がかわいい!

外国の子供の絵本のような雰囲気を意識して書かれているということで、文体や表現もおとぎ話のようにかわいらしい。だけど内容は大人の不倫のはなし。どろどろな出来事とファンタジーな雰囲気のミックスがなんともいえません。

主人公の美弥子さんはまさにおとぎ話の主人公にふさわしいような小鳥のように可憐な女性。

家事や、嫁としての色々な役割を丁寧にこなし、毎日きちんと生活することにしあわせを感じていた主婦です。そして、恋のお相手となるのがこれまた穏やかでいい感じのジョーンズさん。2人は子供のようにピュアでしあわせなひとときを過ごします。とてもそれは「不倫」だなんて汚らしいものには思えません。

が、美弥子さんは「世界の外に出てしまった」と感じるようになります。それまでの守られていた世界の外に。今まで自分を取り囲んでいた何もかもがそれまでとまったく違って見え、美弥子さんは驚きます。ジョーンズさんは、それを「真理を発見したということだ」といいます。

美弥子さんは一体どうなってしまうんでしょう。

最後の3行がなんとも残酷です。女としてはぞっとします。だけどあれこそ男性の真理ですね。

表紙の絵も、一見すごくかわいいんですが、よく見ると不穏な感じ。美しくも残酷さが秘められているのが大人のおとぎ話ですね。