蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)/山田 詠美
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なんかふっと読んでみたら、はまりました。

いつ読んだのか全く覚えてないぐらい、何年も前に読んだきりだったんですが、いやぁ、やっぱこれは面白いわぁ、面白いってこういうことなんだなぁ、と、面白さの定義を再認識する程面白かったです(笑)


「蝶々の纏足」も「風葬の教室」も、なんか暗くてドロドロとしたまったく爽やかじゃない話なんですけど、うん、だから私のツボなのか(笑)


「蝶々の纏足」っていうのは、女の子二人組の話で、一人はもうだれが見てもかわいい!って思うようなきらきらした女の子で、もう一人は、いつもその子と比較されて損ばかりしているような女の子。主人公のその子は、ずっと支配的な彼女の元から逃げ出したいと思っていて、彼女の事を憎んですらいたのに、なかなか彼女から逃げ出せずにいた。だけど、その清純な感じの彼女にはない、気だるい大人の女の魅力を身につけることによって、遂に主人公は、彼女の束縛から逃れて、一人の人間として飛び立つという話です。


うん、これが本当に、なんだろう、女特有のドロドロとした内面が非常によく表現されていると思います。

多分、女の人が読んだら、大抵の人が、わかるー!って思うだろうけど、男の人が読んでも…なんかぴんとこないような。そんな感じなんじゃないかなぁと、勝手に思ってます。


女同士で、本当にべったりな感じの友情ってなると、うん、こんな風になるよねぇって思う。二人だと特にね。どっちかが光で、どっちかがその影、みたいな。

光の方になる人はいいけど、影の方にされてしまった方は、たまったもんじゃない。

フツー、誰だって、光の方がいいに決まってる。

「お前は光、俺は影」なんて言えるのは、おそらくアンドレぐらいだと思います(笑)


でも光の方になった人は、影になった人を絶対に放そうとはしないし、やっぱりそれだけの強い魅力と、コントロール力を持っているもの。そしてそういう人っていうのは、相手を支配しながらも、相手に対する強い愛情も持っているんだよね。そのことにもなんとなく気付いてしまっているから、余計に影の子は逃げられない。


この話で主人公を縛り付ける存在であるえり子も、やっぱり主人公のことを愛してるし、主人公もえり子のことを憎みながらも愛していると思う。


愛してるんだけど、お互いの幸せを願ってあげられないっていうのがまぁせつないですね。



まぁでも、それよりもさらに私が好きなのが、「風葬の教室」です。

これは小学5年生のおしゃまな転校生の女の子が、垢抜けてかわいいがゆえに、壮絶ないじめにあうという、これもまたねじれた人間心理がよく描かれている話だと思います。


徐々に徐々にいじめという形が出来上がっていき、本格化していく様子なんかが、すごいリアルです。

で、いじめの犠牲となる主人公の女の子というのが、大人っぽい頭のいい女の子なので、そのいじめが実に不条理なものであることを、自分でしっかりと理解している。だけどというか、だからこそというか、彼女は本気で自殺を考えるところまで追い詰められます。

その時聞こえてくるのが、家族の声。

この家族が本当にクールな家族で、まずねぇちゃんは、山田詠美作品によく登場する典型的な、かっこよくて大人の魅力溢れる不良少女。親の前で、平気でセックスの話をし、さらにまぁ、親の方もそんな娘を軽くたしなめつつも、容認しているというような、了見の広い親。そんな自分の家族を、この主人公の女の子は、とても誇りに思ってます。

で、結局家族のことを考えて、主人公は自殺を思いとどまり、その時聞こえてきた姉の言葉にヒントを得て、強くたくましく生まれ変わります。

それはもう見事です。


小学5年生でここまでできるものか!?とも思いますが、まぁ、できんことはないですね。

小学5年生って、大人が考えてる程、子供じゃない。

なめてかかったら、多分大人の方が出し抜かれる。それも、気が付かないぐらいに巧妙に。


そんな少女たちのダークサイドがいっぱいです。


いやぁ、少女でどろどろと言ったらやっぱ山田詠美ですねぇ。私はこれ、中学生の時に読みたかったなぁって思う。

大人クールな不良になりたい少女、まわりの子たちはみんなはガキだなぁって思ってる少女、学校での人間関係に居心地の悪さを感じている少女、必見です☆