建設業界はどの業種においても過去より常に慢性的な人手不足に陥り、
現在はその限界地点を突破していると認識しています。
法令や建設業界及び現場単位の独自ルール、税制度や雇用に関する世間の認識等
様々な要素が建設業界では矛盾と悪循環を生み慢性的な人手不足は加速する一方
となっています。
まずは雇用される側から見た建設業のイメージについて
実際に面接に来られた方や従業員・その他周りの方からの意見をまとめてみます。
1、危険な業務を常にしている。
2、未経験で不安
3、朝早く夜遅い(拘束時間が長い)
4、暴言や暴行等建設業自体が反社会的な認識をもっている。
5、男性の職場という認識
上記5点が様々な方から多くの質問が寄せられる内容です。
まずはこの5点について、経営的な意見も交えながら解説していきます。
今回のテーマは
4,暴言や暴行等建設業自体が反社会的な認識をもっている。
についてです。
ニュースでたまに出てくるパワハラというかもはや事件な建設会社の実態。
いじめや暴言暴行等非常に悪いイメージを持たれるニュースがたまに
流れます。
「昔は」たしかにそういう会社は非常に多かったです。
人権なんてあったものではない特有の状態が確かに存在する業種でした。
当然そういったことが常態化し黙認されてきた建設業界全体が反省すべき点であります。建物が工期内に完成すればなんでもありといった過去のイメージが、
今現在でも世間に浸透されたままとなり、
人手不足の大きな原因になってしまっているのは事実です。
過酷な労働時間・人権無視な人間関係・過酷な労働条件・様々な不正を
行政までもが目を瞑り、「建設業は仕方ない」その一言で済ませてきました。
しかし、現在は世の中の流れに乗り、この10年で非常にクリーン化されてきました。
TVのCMでもゼネコンや工務店等建設事業者のCMも非常に増え業界全体を上げて
浄化に取り組んでいます。
現在、我々建設事業者は雇用に際し膨大で様々な調査書類や提出書類を記入提出し、
誓約書や契約書等全てを提示した上で現場に臨み、パワハラや雇用不正等
の無いよう上位企業やお客様に誓約し常に監視されています。
当然、現在では各建設業社内で問題が発覚すれば始末書や謝罪では済みません。
工事契約の解除は当然の如く、情報は建設業内で共有され当該建設会社は建設業の継続が困難になるほどの社会的制裁をうけます。
逆に我々建設経営者は同業他社と協力し、会議や会合を経て労働条件の改良や
環境改善を現場及びゼネコン等上位企業への要望や独自対応策として申請し、
日々対応しています。
過去従来、雇用される側の不安要素は大きく取り除かれているのではないかと
思っています。
ただ、お仕事がらどうしても危険が伴ったり、重たい物を扱ったり、季節ごとに暑さ寒さにさらされたりと、他業種に比べて大変なお仕事なのは確かです。
しかし、建設業は技術職であり、素材や工事に対する品質の維持や個人企業共にお互いに技術や知識を競い利益を上げていきます。
プロスポーツ選手をイメージするとわかりやすいですが、
サッカーでも野球でも記録を出したりレギュラーに加入し続けるには、自分に厳しくしっかり勉強とトレーニングを積んで人の記録をどんどん越していかなければなりません。
建設業でも当然、仕上がり具合や品質が常に判断されてしまうお仕事で、頑張ってもなかなか結果が出ない場合も多くあります。
結果が出ないのはパワハラ等ではなく、建設各社若しくはお客様が認める品質基準は
様々でそれは単に強度や構造の品質だけではなく、外観や細かな装飾のデザイン等も
価値観は人それぞれです。
全ての根底には建物にはそれぞれ「人が住む」「様々な人が利用する」といった
用途があり、半年で壊れてしまうような建物や接触等により危険な箇所が多いといった建物はそもそも評価されるに値しません。
周囲がパワハラ等に気を付けても技術や知識を習得するまでは、
注意や指導が頻発してしまうのは理解頂く必要があると思います。
少し大げさな言い方かもしれませんが、
工事手順や方法を間違えれば、
工事中に関しましては、自身や周りで作業する方、近隣住民や道路を通行している方に大けがや死亡事故等危険を及ぼす可能性がつきまとい、
建物が完成してからもその建物の利用者の方に健康被害や倒壊事故等様々な危険を
及ぼしてしまいます。
住宅一つに例えてもお客様はきっと人生の中で一番お金がかかるのがマイホームでは
ないでしょうか。
高いお金を出し、家族と生涯暮らすお家を作るお仕事で欠陥住宅を作るわけにはいきません。
危ないこと、間違っていることをその場で正し、対応しなければどうなってしまうでしょうか。ある一定の技術と知識が必要であるが為に建設事業者が存在するわけで
ちょっと失敗したけどいいやという感覚でいいのは「DIY」だけです。
また、マニュアル通りにいかないのも建設業の特色でもあります。
よく私も作業の指示をする中で、「ここをもう少しこういう風にしましょうか」
と指示を出すと入りたての従業員の職人から「最初に言って下さいよ」って言われることがあります。
天気や気温、湿度、風量等により同じ人が同じ工法で作業を行っても必ずしも
同じ品質や結果が出るとは限らないのです。
その為、これでは私が意識する品質基準に満たないなと思えば指示や指導により
注文をつけます。
一生懸命やっている従業員からは「せっかくここまで組み立てたのに」
と思われてしまいますが、総合的な結果としてみればその管理体制と感性が
買われ、品質への評価と技術と知識への信頼を得ることに繋がっています。
過去の建設業は個人プレーが多かった業種であり、人を育てる前に自身の技術や知識を一生懸命磨き競合を追い抜く競技のようなものでした。
結果として後継者は育たず、周囲を蹴落として上り詰めた人ばかりが残りました。
今は技術の発達により、より大きく若しくはとにかくコンパクトに現場に持ち込み
チームによってなされるような工法が非常に増えました。
その分工期を短縮できたり、個々にかかる負荷が減ったりと品質を保持したまま
作業が楽になりました。
個人プレーがチームプレーになったことで、その分チームワークが非常に重要で
現実的にパワハラをする人がいれば、省かれますし、反社会的な言動をすれば
排除されてしまいます。
業界自体の技術の革新とテクノロジーによってその様な風潮が自然と形成された
部分も多く、結果「昔ながらの個人プレーは一切通用しない」という業界に
生まれ変わったのです。
今では逆に反社会的な人材が入りにくい業種なのではないでしょうか。
建設業界における雇用の現在~5~へ続く