先日、母が介護認定を受けた日の夜。
夢のなかで、わたしは夢を見ていた。
はじまりは我が家の二階で、みんなで笑いあっているところからだった。
階段の形状や置いてある物まで全て同じだったので、わたしはそこが夢のなかだとは全く気付いていなかった。
瞬きをして目をあけたらベッドのうえで、これまでのことは全て夢だということに気付いた。
なんともリアルな夢……、などと思っているうちに、夢の中で再び眠りに落ちた。
すると今度は広い会場のような場所に立っていて、なんとなく間隔をあけた其々の場所で、わたしのきれぎれの記憶が形となって動いていた。
今回は、夢のなかにいるとはっきりと分かっていた。
最初に目に入ったのは、五歳頃のマナが楽しそうに笑っている姿だった。
顔中に笑みを広げ、ころころとした笑い声をあげている。
わたしは見えない壁の内側にいるので、触れることも声をかけることもできず、ただ姿を見ている事しかできない。
綺麗に結んだ髪にあどけない顔、そして幼さいっぱいのぽっちゃりとした腕を見て、なんて可愛らしいのだろうと思った。(美醜ではなく、親だからね)
子育てをしていた時、父の介護も重なって、毎日が時間との闘いだった。
我が子の可愛さを、しみじみと感じる余裕などなかった。
こんなにも愛おしい存在だったのだと改めて思ったら、涙がとめどなく流れた。
子育てをしている時間は、ほんとあっという間。
いまも大切なことに変わりはないけど、全身で求めてくれたあの時は、もう戻ってこない。
涙を拭いてマナの向こうに目を向けると、そこには舞台袖で生徒さんの踊りを見守る母がいた。
パイプイスに腰掛け、背筋をすっと伸ばし、指導者としての顔をしている。
母はこんなにもきりりとしていたんだと思ったら、胸が苦しくなった。
年を重ね丸くなってしまった背中と、緩慢な動きばかりが残ってしまうが、この時の母を、母が一番輝いていた時を、決して忘れてはいけないと思った。
母の保険証入れの中には、発表会のあと父と並んで撮った写真が大切に収められている。
後悔など残さぬように、二度と戻らない今を、大切に過ごしていかなければ。
