本日は、小説「Requiem」の出だしの部分を掲載さしていただきます。
もしよろしければ、目を通して感想なぞもらえれば大変恐縮であります。
ではごゆっくり
世界はひとつではない。
世界は無数に存在し、かつ同時に時が動いている。無論その生活の様子は一つ一つ異なっている。科学が異常に発達した世界。未だに狩りで生計を立てている世界。僅かな人しかいない世界や、大型の動物が世界を取り締まっている世界もある。
それこそ世界は自由であり、その種類は十や二十ではきかないだろう。
だからこそ世界は面白い。
しかし、その世界と世界を結んではいけない。干渉してはならない。知ってしまってはいけない。存在を知られてはいけない。
世界はすべて、ほかの世界とは、無関心でいなければいけない。ソウでなければこの世のバランスが崩れる。世界は自由のように見えて、実は決まりごとの塊なのだ。法則を無視して暴走すると文化や技術が混ざり合って滅茶苦茶になる。
世界が複数ある理由はどこの世界でも謎に包まれている。
それはいまでも続いている。否、どこの世界にいる生物すべてはほかの世界の存在など気にも留めない。
むしろほかの世界など存在しないとそう思っているだろう。
それはとある世界に住む青年たちも同じ。ただその人物の周りには変化の兆しが見られる。
世界のバランスを崩しうる兆し。世界は複数ある。その中でも特に興味深いのは、世界の中に、どこかの世界の『過去』が含まれることがある。
この文章を書いた私。つまりハガリョウはその変化の兆しを超えて今に至る。
私が当時、県立皐月高校に通っていたときの話である。その頃は私も、ただの高校生であった。
世界に疑問など抱かなかったし、抱く気など無かった。
しかし出会ってしまった。世界という、大きな存在に。
世界がひとつではないように、過去もひとつではない。
過去には悲惨な運命をたどるモノもあれば、全てがうまくいくモノもある。
もし幸福なイマが悲惨なカコに塗り潰されれば、未来は変わる。すなわち、イマが変わる。
ヒトの力では運命は変わらない。運命には抗い続けて、最後には運命に潰される。
運命に抗い続けた物語。それが私の実話である。
「……」
意識が鮮明になる。どうやら僕は寝ていて、夢の中にいるようだ。
一面真っ白な部屋。机も家具もない。何もない。空っぽな部屋。
「…ココは夢の中なのか……何故僕がこんなところにいるのだろうか。」
遠くのほうから何かが聞こえてくる。美しく儚い音。
どこか悲しみで包まれているような音。
音の主は、部屋の中からだ。でも姿も確認できないが音の音量からして相当遠くから聞こえてきている。
「小さいけどこの音の主は何かを演奏しているのか。でもなんだろうこの曲。何処かで聞いたことがあるような…」
どこへ行くわけでもなく僕はその音を頼りに前進する。果てのない部屋。どこまで行っても真っ白。目が痛くなる。明るさを調整して、目を細める。
そのとき初めて白いローブを着た女性の姿を認識した。
女性は何もっていない。ただ、在る筈のないソラを見ている。横顔はとても綺麗で、僕は今までこんな綺麗な顔を見たことはない。
近くに寄ろうとして走る。だけど、起こる筈がない突風で行く手を阻まれる。
だけど僕の体は彼女をちかくで確認したいらしく、前進をやめない。
近づくたびに僕の腕は傷ついていく。服が裂けそこから僅かな鮮血が流れていく。
「が、い、てぇ」
口から苦悶の声が漏れる。もはや自分の意思とは関係なく体が動く。自らの体が傷つこうとお構い無しに勝手な行動をとる。
もう既に自分では止められない。この肉体の暴走が止まるときそれは、彼女の姿を近くで確認するときだろう。
大きな気配がやってくるのを肌で感じる。こんな雄大な気配は今までかんじたことがない。
「お止めなさい。いくら足掻こうとも今の貴方の力では触れることさえできないのですから…」
気配はあるが声だけしかしない。姿が見えないまま僕の体を引き止める。
今まで持ち主の言うことを聞かなかった肉体が言葉一つで活動を停止してしまったのである。
どたん、と派手な音を立てて尻餅をつく。今まで無意識に体が動いていたからか、力が抜けて座り込む。これでは示しがつかない。地面についた手に力を入れて立ち上がる。
どすん。立ち上がったのは良いが、そのままを維持できずにまた尻餅をついてしまった。
「ふふふ。貴方は本当に落ち着きがないですね。立ち上がれないのであればそのまま聞いていなさい」
声の主は笑っている。のた打ち回る僕を見てだ。
だんだん腹が立ってきた。純粋にただこの喧嘩売っているような口調で話す声の主に対して。
「怒っているのですか。すいません。つい面白かったものですから…」
などといっている。僕は怒りをこらえ冷静に用件を聞く。
「貴方が僕をここに?何故?何のために?」
「質問は一つずつお願い…。そうですね、時間もないことですし、用件だけ伝えましょう。貴方に大きな危険が迫っています」
唐突に声の主はそう告げた。言葉を鵜呑みにできない。
今の生活が安全であるならば、危険な目に合うということはこの生活が壊れるというのか。
そんなことは信じられない。信用できない。
「信じられないのものも無理はない。これは未来のことであり、先のことであるのだから。詳しいことはいえませんが、貴方の力を悪用しようと目論んでいる人物がいる。いずれ命を掛けるようなことになるでしょう。これは運命。確定事項であるのです」
は。ははは。笑える。コイツ頭がおかしいのだろうか。未来だと。何をふざけたことを。
未来が見えるなんてそんなSFチックなことは存在しない。
存在してはならないのだ。それこそ、信じられないことだから。
「そうですね。完結にあんたの心の中で今考えたことをまとめると、私は信用されていないのですね。こればかりは何を言っても信用できないのは十分に理解していましたが、ここまで嫌な気分になるものなのですね」
そろそろ時間ですかと付け足して、最後に警告する。
「ハガリョウ。今からもとの世界に戻るのですが、恐らく世界は違った見方で貴方を見るでしょう。貴方は戻った時点で世界から除外されているのです。戻ったところで居場所がないということです。大方、向こう側の誰かが接触してくるのでしょう。そこまでは見ることはできなかったのですか…。確かなことは、気をつけたほうがいい。もしかしたら戻って数時間後には命を落としているかもしれませんよ。そこのところの心配は要らないでしょう。貴方には強くて頼りになる友がいるのだから」
強くて頼れる友ね。はいはい。気をつければいいのね。命を狙われるかもしれないしね。
僕は半信半疑で話を聞く。もう怒りを抑えられない。既に両手は熱を帯びて握り拳を作っている。
「あなたは、自分が背負っている責務のために行動する。そのためには、あらゆる危険にさらされるでしょう。ですが決して臆する事はありません。なぜならあなたには……………がいることを忘れないで下さい……」
声が途中切れて聞き取れなかった。
キィィィィインと何かの音がする。
振り向くとさっきまでいたはずの彼女が遠く離れていく。
よく見てみろ。自分が見たものをすべて信じるな。別の視点から見ろと体の内部から騒ぎ立てる。
不意に視点が切り替わった。僕と彼女よりさらに向こうの方から見た視点で。
違う。彼女が離れているのではない……僕の方が遠ざかっている。
「!!!」
今彼女の口が裂けた様に見えた。無論今僕がいるところからでは彼女の顔など見えはしないのに…。
意識が現実の世界に戻ろうとしている。徐々に白い部屋がなくなっていき、やがては真っ黒な闇に覆われた。
………
↓に続きます。