―――――山の幸――――
実は山の幸と言っても、そこは海岸沿いの平地、お米は良いものがしっかり取れるのですが、山は近くには無いので、平地で取れるものと言うことになります、
先にご紹介した通り日本一の農産物が色々取れるところ静岡ですから、それなりに色々一杯取れるのです。
私の家はいわゆる農家ではありませんでしたが、屋敷と称する裏背戸が3000坪もありました(いや、今もあるのですが)から、そこには果物だけでも熟すと橙色にやわらかくなり、甘く香りも豊かな豊後梅、甘柿、渋柿、桃、びわ、大きな粒のなるぐみ、イチジク、みかん、夏みかん、橙、きんかん、くるみ、ぶどう、西瓜、いちご、ときにはびんかん松の赤い実も!
びわなど大きな木が三本もあり、子供の頃はこれに登っては枝の叉のところに腰を下ろし、何十個も食べるのです。お腹一杯、そしてときにはお腹をこわすほど。
果物以外にもきくらげや、今はまぼろしの松露も裏の松林で沢山取れて。
でも、松露は今は全く取れず、最後に食べたのは今の会社が始まった頃の50年位前、お相伴に預かり、築地の料亭でお吸い物に麗々しくちょこんと入って出て来て、今はやりのこれは松露でしてとていねいな説明をうけつつ頂いたのが見るのも食べるのも最後になりました。
当時私の家は戦後の農地改革に会い、収入がほぼ途絶える状態の窮状の中にありましたが、今思えば今の暮らしよりずっと豊かだったかもしれません。
注.びんかん松:びんかんと言う珍しい木があり、小鳥が運び黒松に寄生します。これが小さなぐみ位の赤い甘いおいしい実を付けます。1年に1〜2ヶ位実を付けるかどうか。
これも子供のとき食べたのが最後になり、今となってはまぼろしの木の実です。
松露。今はもう写せません。
こんな感じのものでした。キノコの一種です。
白い米松露と茶色の麦松露があり、白い米松露の方が上等とされており、
くせのない軽い感じでした。