装置は調整後、契約された仕様通りに作動出来たのですが、豚は装置の云うことを聞いてはくれません。

 一万頭に一頭づつ、どうぞどうぞとご機嫌や食欲を見ながらやるわけにも行きません。豚房毎に一定量を供給します。

 ところが、今までは係りの人達が粉の餌を担いで各豚房に近づくと 早くくれと餌の方へ我先に駆け寄ります。しかし水に溶いた餌は、自動で流れ込んでも豚は知らん顔。困りました。餌を食べてくれないのです。

でも、豚達もやがて電磁弁の作動音と共に、餌が流れて来ることに気づき、我先に餌箱へ突進、やれやれ。

しかしながら、数回すると この我先が困ることになるのです、強い豚が我先におなか一杯食べ、弱い豚は蹴飛ばされ、強いのが満腹して立ち去るまで待たなくてはなりません。残り水をペロペロなめる程度。人間様で云えば貧富の差の拡大です。

従来は、係りの人が強いのをはたいてどかしたり、弱いのの近くへ行って先に餌をやったりしていたのです。

自動で流れ込んでくる餌には人の動きでの対応は困難です。これは大事、最後まで大事として残りました。

結局装置としては仕様上検収にはなりましたが、世界中への売り込みの“野望”は“豚座”してしまいました。

でも、今では日本でも10万頭レベルで飼われているとのこと。当然自動給餌がされているはずゆえ、その後これらの問題も克服して行ったのでしょう。

ただ、私達は本業の工場向けの装置の開発に戻り、この分野での深追いはしない結果となり、私も豚から離れてしまいました。


一大(いちだい)のブログ

豚の仕事がうまく行っていたら、世界の牧場を駆け巡り 今とは違う会社をやっていたかも。そして、豚王として大金持ちになっていたかも、へへへ。