邦題:灼熱の魂
69点。
レバノン内戦が背景にあるヒューマンミステリー映画。
当てにならない映倫区分12歳以下保護者同伴、直接描写は控えているものの、テーマが重く、未怜区分だと30歳以下視聴禁止です。
捻くれた母親が死んでからも、子供らに嫌な思いをさせると言ったプロットを偽善で包み込んで、衝撃の結末に一人でも多く繋げる為だけに、丁寧に品良く撮影した感じの、総じて悪意の塊みたいな映画です。
以下、ネタバレ。って言うか、酷評。
ドッジボールやってんのに、視界の外から後頭部に向けて、バレーボールをぶつけるやつは嫌らしいと思いませんか。
母親のナワルは文字通り魂を焦がす様な壮絶な人生を歩んでいました。
これを言い換えると、世間に背を向けて生きている、端的に言うとテロリストです。
本人は灼熱の如く懸命に生きているんでしょうが、周りはとんでもなく迷惑だったと思われます。本来なら処刑される運命を女性である事で回避していますが、産む性の悲劇とも言える結末に彼女の精神は終ぞ耐え切れず、衰弱して死んでしまいました。
この映画の原作は存じ上げませんが、似通った設定のギリシア悲劇では自殺したり、自身で目を潰したりと惨憺たる事になるのですが、この映画はそうなりません。実際問題、双子には出来る事が何も無いですからね。只黙って受け止めるしかない。これは愛ですか?そんなの暴力でしょうよ。
知らなくても良い、人間なら、ましてや母親ならば墓場まで持って行く話を、自分の子供に文字通り掘り起こさせるなんて。悍まし過ぎて、常人の感覚とは思えません。
悲劇の連鎖を断ち切ると言う意味では、後世に伝える必要も無いし、母を赦し生きた証を認めて欲しいと言うならば、何て自分勝手な人だろうとしか思えない。
手紙の中で「愛している」と何度繰り返したとて、文字だけでしか無く、双子の出生を考えたら正しく清く母の愛を与えられたのかと思うと胸が痛みます。
悪い方だとしても心を揺さぶられるのは事実です。無理がある、多少プロットに粗が目立つところを諸々して点数はちょっと高めに落ち着きました。