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想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

きみの色

監督:山田尚子

感想
 サイエンスSaru特有のぐにゃぐにゃとした形態感のアニメーション、山田監督ならではの心理描写と密接に結びついた演出とカメラワーク。あまりの見事さに冒頭は物語を忘れて見惚れてしまう。その後は物語に入り込めるけれど、演出の見事さは変わらない。本屋さんで主人公が大声を上げるシーン(PV40秒辺り)なんかサイコーだ。

 ただ、物語とか設定はかなり使い古されたものに見える。それこそ『けいおん』や『リズと青い鳥』『聲の形』のような山田監督作品もそうだし、『心が叫びたがってるんだ』とか『耳をすばせば』、さらには大林作品の雰囲気も感じる。逆に言えば、この作品の核が見えない。

 ひとつの言葉を特別なものにするような文学性、あるいはどれだけ稚拙でも感じ取れる作家の魂の叫びのようなもの、そういうものがこの作品にはない。吉田玲子さんは脚本家としては日本屈指の人だけれど、やっぱり本質的に作家とは違うんだと思う。

 ず~っと、どこかふわふわとした感覚が続く。地に足の着いていない感覚。頭の中だけで作られたような物語。主人公の設定も物語に有機的に絡んでこない。それこそ彩り程度の感じ。
 
 それでも変に引っかかるようなところはないし、嫌なキャラクターもいない。さすがに上手くまとまってはいる。絵も音も心地よくて、見てて退屈しない。圧倒的な演出の力でグッとくる場面もある。

 美点は多い作品だけれど、画竜点睛を欠くといった感じかな。

☆☆☆☆★(4.5)


【8/30(金)公開】「きみの色」スペシャルPV