【コラム】競走馬ゲート入れの「ムチ」は“残酷”か、“必要”か…「ローブ事件」の波紋 | アーク オフィシャルブログ「【開胸手術】~ドナーとの巡り合い(勉強編)」Powered by Ameba

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競走馬ゲート入れの「ムチ」は“残酷”か、“必要”か…「ローブ事件」の波紋
産経新聞 2015年3月19日付ニュース


ビシッ-。

昨年11月30日、テレビの競馬中継でムチの音が響き渡った。
馬をスタート位置へと誘導していた日本中央競馬会(JRA)の発走委員が振るったムチだった。

あれから約3カ月。

ムチを振るわれて以降、レースから遠ざかっていた競走馬「ローブティサージュ」(牝5歳)が3月1日、レースに復帰し、3着に食い込む力走を見せた。
だが、発走委員のムチが適切だったのか、中継を見た視聴者から疑問の声が上がったほか、馬主の「シルクレーシング」(東京都港区)も会報誌で「不必要と思われるムチの使用により精神的なダメージを受けたと言わざるを得ない」との異例の見解を出すなど、波紋を呼んでいる。


■騎手が下馬した後もムチ、テレビにも音拾われ

 ローブティサージュは、平成22年1月28日生まれ。24年にGIレースを制するなど輝かしい経歴を持つ。

 シルクレーシングへの取材と会報誌によると、一連の経緯は次の通りだ。

 昨年11月30日、京都競馬場で行われた「京阪杯」(GIII)で、ゲート入りを嫌がったローブティサージュが後ろ脚を大きく蹴り上げた際、発走委員の右手に当たった。発走委員は転倒し、腕時計も破損したという。

 白い枠入れテープを使ってゲートに誘導しようともしたが、ローブティサージュはなおも後ろ脚を蹴り上げて抵抗した。

騎乗していた三浦皇成騎手(25)が「目隠しをすればすっと入ります」と、発走委員に進言したが、「手順がある」と却下されたという。

 待避所付近へ連れて行きバックでゲートに入れようともしたが、ローブティサージュはそれも嫌がったため、発走委員が数回、後ろ脚付近にムチを振るった。

この時のムチの音がテレビで響き渡った。

 その後、待避所で目隠しをすることにし、三浦騎手が下馬した。だが、その直後、発走委員が何かを叫びながら脇腹の付近にムチを入れた。その時の様子もテレビに映っている。

 目隠しされたローブティサージュは、ようやくゲートに入ったが、目隠しを取ると、目は血走っており、明らかに興奮した状態だったという。4番人気だったが、結果は18頭中14着と惨敗だった。


 三浦騎手はシルクレーシングの会報誌に寄せたコメントで、「(ローブティサージュに)蹴られたことに怒ったのか、発走委員は余計にムチを打ってきた。もっと早く目隠しをしていればこんなこともなかったと思うし、もう少し馬に合ったやり方をしてほしかった」と振り返っている。



■JRAは「痛みは伴わない」との見解

 JRA広報部によると、発走委員によるゲート入りの誘導方法は、馬の後ろから声を掛け、手を広げて促すのが第1段階。

尾を持ったり、ムチを使用して促す方法が第2段階。

それでも抵抗する場合は、騎手が馬から下りて枠入れ▽入りやすくするためゲートの前を開ける▽目隠しをする-などの手段を用いるという。


 今回の場合、ゲートに入る様子を見せないローブティサージュに対し、ムチはこれ以上後退してはいけないという合図だったという。
また、ムチは大きな音を出すが、ナイロン製で痛みを伴うものではないと説明する。

また、目隠しは、馬がびっくりして暴れることもあるため、最終手段とするケースが多いという。


 JRA広報部は「発走委員は馬術の指導者ら馬のプロが担当しており、ゲート入りのトレーニングに立ち会ったり、調教師らと協議したりしながら、それぞれの馬に合わせた最適な方法を模索している」と説明。
「ムチの使用を含め、適切な手順を踏んだ処置であったと考えております」とコメントした。



■調教師は「馬は繊細な生き物だからね」

 シルクレーシングによると、ローブティサージュにはこのレース後、ゲート入りができるかどうかをみるゲート試験を行ったが、ゲートに近づくことに対し拒否反応を示して不合格になったといい、レースに出場することができなかった。
2月5日の再試験では、最初から目隠しをしてゲート入りをできるように申請して臨んだところ、無事、合格することができたという。


 3月1日に阪神競馬場で行われた「阪急杯」(GIII)では、最初から目隠しした状態でゲート入り。
抵抗したり暴れたりすることはなくスムーズにゲートに入ったローブティサージュは、9番人気に甘んじたものの、16頭中3着に食い込む力走を見せ、周囲の人をほっとさせた。


 競馬ではレース中、騎手がムチを使用する。
ただ、そのムチと今回のゲート入りの際のムチは別物だ。
競馬担当記者によると、誘導の際は、ムチは見せるだけのことが多く、脚に当たることがあっても脇腹に当てることはないという。
ムチは全速力で走る合図でもあるので、レース前に必要以上に興奮させてしまう恐れもあると指摘する。


 また、レース中のムチに対しても、国際競馬統括機関連盟(IFHA)が2010年にガイドラインを制定、以下の項目でムチの使用を禁止している。


▽馬がけがをするほど(過度に強く)使用する
▽使用者が肩より上に腕を上げて振り下ろす
▽反応(脚勢)のない馬に対して必要以上に使用する
▽明らかに着順の大勢が決した後に必要以上に使用する
▽ゴール後に使用する
▽ひばら(脇腹)へ使用する
▽過度に頻発して使用する
▽頭部もしくはその付近に対して使用する
▽原則として鞍より前方に逆(さか)ムチ(先端を上方に向けた握り方)で使用する-

の9項目だ。

 JRAも平成23年1月、ガイドラインに沿った新ルールを導入している。


 ローブティサージュを管理する須貝尚介調教師は
「追いムチをしてゲート入りを促すというのは手順としてある。ただ、ローブに限らず、馬は繊細な生き物だからね」
と語り、
「馬を管理する側、レースを施行する側がお互いに協力してよりよい競馬ができるようにしていきたい」話した。

ローブティサージュに対しては「デビュー前から難しいところがある馬だったけど、牧場や厩舎(きゅうしゃ)スタッフが試行錯誤を重ねてやってきた。がんばってほしい」と期待を込めた。