【凱旋門賞】地元メディアは日本馬に辛口 トレヴ鞍上ジャルネも苦言
スポニチアネックス 2014年10月7日付ニュース
日本馬3頭が出走して5日に行われた仏G1「凱旋門賞」は、
ハープスター(牝3=松田博)6着、ジャスタウェイ(牡5=須貝)8着、ゴールドシップ(同)14着とそろって惨敗。
日本馬の悲願達成はならなかった。
3頭はレースから一夜明けた6日、シャンティイの小林智厩舎に戻って静養。
同日付の地元メディアは、今回の挑戦に対し厳しい見方を示した。
3頭は10日に現地を出発し、成田空港経由で帰国する予定だ。
斤量が有利なこともあり、上位人気に推されていた3歳牝馬ハープスターだったが、6着に敗れた。
後方待機からの末脚勝負は作戦通り。
川田はレース後「ゲート内で待たされて、馬がおとなしくなりすぎた。普段以上に進んで行かず、思った以上に(後方に)置かれてしまった」と振り返った。
レースのラスト3Fの公式ラップは34秒45。
道中20頭中19番手につけていたハープが、33秒台前半の末脚を繰り出したのは確実。
序盤に少しだけ狂ったリズムが、結局は尾を引いた。
最後の直線は大外に持ち出した。
「先生からの指示でいつもの競馬。悔いはありません」と川田。松田博師も「この馬のパターンで負けたんだ。仕方ない」と話し、
陣営にしてみれば納得のレースだった。
だが優勝馬トレヴのヘッド師の見立ては違う。
「ハープスターの末脚は凄かった。でも、あれだけ外を回っては厳しい」と語っている。
6日付の仏競馬専門紙「パリ・チュルフ」は、連覇したトレヴ一色。
日本馬については写真掲載もなく扱いは小さめ。
記事の前段は「今年も日本馬は報われなかった」と同情的な内容だったが、後半では論調が一変。
3頭の総論として「現地での前哨戦を使わなかった」ことを敗因の一つに挙げ、
レースについても「外を回すだけの消極的な騎乗になった。戦略が足りなかった」と厳しい分析をしている。
トレヴをVに導いたジャルネは「日本馬が凱旋門賞を勝つにはどうすればいい?」という問いに
「ロンシャンは特殊な競馬場。やはりそこを走った経験は非常に大事」と前哨戦を使うことの重要性をアピール。
さらに「こちらのレースは戦略が大事。流れ、展開を読めないと勝てないんだ」とレース運びに苦言を呈した。
外国人記者の日本馬についての感想は「勝てるチャンスはあったが、馬も人も経験不足」というのが共通意見。
確かに今年の3頭は馬だけでなく、騎手も凱旋門賞初参戦。
これについては、今後も諦めることなくチャレンジを続け、個人としてもチームとしても経験を蓄積していくしかない。
パリ・チュルフ紙の記事はこう締めくくっている。
「親日派のペリエが、スタンドで観戦していたよ」。なぜ騎乗依頼をしなかったのか、という痛烈な皮肉。
このままでは引き下がれない。
敗戦の屈辱も糧にして、悲願へ挑戦あるのみだ。
◆凱旋門賞VTR
ラビットホース(ペースメーカー)のモンヴィロンの逃げで淡々とした流れ。
ジャスタウェイは後方4番手、ハープスターは後方2番手、ゴールドシップは最後方から。
直線はジャスタがインを突き、ハープとゴールドは外を回したが、いずれもV争いには加われずハープの6着が最高。
インで脚をためたトレヴが抜け出し、2馬身差の快勝。36年ぶりの連覇を成し遂げた。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
日本馬19頭、凱旋門賞に足りないものは何
【パリ6日=松田直樹】凱旋門賞(G1、芝2400メートル、ロンシャン)で日本競馬界の夢はまたも打ち砕かれた。
ハープスター(牝3、松田博)、ジャスタウェイ(牡5、須貝)、ゴールドシップ(同)の強力3騎で挑んだが、ハープの6着が最高だった。
トレヴ(牝4、フランス・ヘッドマーレック)を36年ぶりの凱旋門賞連覇に導いたティエリ・ジャルネ騎手(47)を直撃した。
落胆は大きい。
日本のトップホース3頭でも、崩せなかった凱旋門賞の牙城。
ロンシャン競馬場内では一時、1番人気に支持された日本馬初の3歳牝馬で参戦したハープスターの6着が最高。
世界1位のジャスタウェイ8着、そしてG1・5勝のゴールドシップは14着に沈んだ。
勝ったのは昨年の覇者トレヴ。
中団インから流れに乗り、直線手前では好位に位置取り、突き抜けた。
今年未勝利で前評判を落としていた女王の劇的復活。
導いたジャルネ騎手に「日本」を聞いた。
ジャルネ ロンシャンの競馬場は日本からすると、特殊な馬場。
やはり“走ったことがある”という経験は非常に大事。
今回の日本馬にずしりと響く。
今年を含めのべ19頭が挑戦し、2着4回。前哨戦を走り、結果を出せなかった馬もいたが、
上位に入った馬は、前哨戦を使っている。
99年エルコンドルパサー、10年ナカヤマフェスタ、12・13年オルフェーヴルの2着馬はフォワ賞を挟んでの参戦。
昨年の4着馬キズナもニエル賞を経て大一番に臨んでいた。今回は経験不足が招いた敗戦か。
ジョッキーに対しても、厳しくも温かいメッセージを送った。
ジャルネ 日本のジョッキーにとって、経験のない競馬場で競馬をするのは難しいこと。
日本はスピード重視の競馬だが、こちらは戦術が大事。それが読めないと勝つことは難しい。
僕はトレヴをデビューからよく知っているし、ロンシャンのコースもよく知っている。
この2つが重なったから2回も勝てた。
ただ強い馬が勝てる舞台ではないのだろう。
日本馬陣営のトレーナー、騎手は敗戦後に「甘くない」と口をそろえた。
歴史に挑み、敗れてもいつかはその悔しさが糧となる時がくる。
その時まで、凱旋門賞は高く、分厚い壁としてそびえ立ち続ける。
◆ティエリ・ジャルネ
1967年3月24日、フランス生まれ。
85年に見習い騎手としてデビュー。
92年~95年まで4年連続で仏リーディングを獲得した。
日本には91年から短期免許で7度来日し、JRA通算1勝。
凱旋門賞は通算4勝。
◆凱旋門賞VTR
ペースメーカーのモンヴィロンが逃げ、キングストンヒルが2番手。
トレヴは好位の内に付けた。ゴールドシップはダッシュがつかず最後方。
ハープスターがその前、ジャスタウェイも後ろから4番手に下げた。
直線手前からゴールドシップがまくるが不発。
直線であいた内をトレヴが一気に抜け、ジャスタウェイも内に潜るが伸びない。
最後に大外をハープスターが追い込むも伸びきれず、トレヴが連覇を達成。
2馬身差の2着には中団から伸びたフリントシャー、3着には好位で粘ったタグルーダが入った。
日本馬はハープが6着、ジャスタが8着、ゴールドが14着だった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
トレヴ連覇、牝馬77年ぶり/凱旋門賞
<凱旋門賞>◇5日=仏・ロンシャン◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走20頭
昨年覇者トレヴ(牝4、ヘッドマーレック、父モティヴェイター)がよみがえり、
牝馬としては1937年コリーダ以来77年ぶりの連覇を達成した。
時計は2分26秒05。
T・ジャルネ騎手は道中6番手のインで脚をため、残り300メートルで一気に抜け出した。
5戦5勝と無敵を誇った昨年とうってかわり、今年はガネー賞2着、プリンスオブウェールズS3着、ヴェルメイユ賞4着と精彩を欠き3連敗。
評価を落としていたが、見事に復活を果たした。
2着にフリントシャー、3着はタグルーダが入った。