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私は高校のときに経験した身分違いの恋というものに敗れてから
わき目も降らずにアルバイトと勉強に励んできた。
 
 
・・・・と思うでしょ?
誰でも思うわよね。
 
そう、身分違いという、今の時代には考えられないような破局の原因。
その時は、みんなそう思っていたのよ。
 
確かに、当時は色々な気持ちを吹っ切る目的もあって、アルバイトと
勉強にと励んではいた。
でもそれが出来たのは、あなたの支えがあったからなの。
どんどんと傾いていく私の想いは絶対に知られてはいけない。 
そう思ってかなり慎重にしてたのに・・・
 
そんな私の気持ちとは全く反対に、花沢類と西門さんは私の気持ちを
全部知っていたってわけ。
 
好きな人が近くにいてるのに、どうして素直になれないのか? 
 
こんな風にやきもきさせていたなんて、その当時は全然気がつかなかったのよ。
当たり前だけど・・・・。
 
そんな私に、一歩、後押しをしてあげようと思ったのか、道明寺の時のように
あからさまではなかったけれど、ちょっとした場を設けてくれたってわけ。 
 
 
「鈍感牧野の幸せ計画」~なんて言って、花沢類と西門さんは、
私でもリラックスできるようなレストランを探して予約していたみたい。 
 
引きずられるようにして連れてこられた私は、この二人がしようと
している意図が分からなかった。
 
入り口で支配人と言葉を交わしたかと思うと、私は支配人に目的の
テーブルへと案内された。 
ディナーを用意してくれていたのね・・・なんて思ったのも束の間、
そのテーブルに居たのは・・・・私の恋する人・・・美作さんだった。
 
 
 
「あれ?牧野、どうした?」
 
「美作さんこそ、ここで・・・・」
 
「俺? 総二郎と約束してたんだよ。 
一緒に飯でも・・・なんてな。 なのに、あいつまだ来ねえし。」
 
「西門さんなら来ないよ?」
 
「は?」
 
「西門さんは来ないの。」
 
「なんで?」
 
「私、西門さんにここまで連れてこられたんだよ。」
 
「どういうこと?」
 
「分からない。 
ただ、この店で予約しているから来いと言われて連れてこられたの。」
 
「で、総二郎は?」
 
「帰った。」
 
「は?」
 
「ここの支配人に私のことを託して、そのまま帰っちゃったのよ。 
だから、私・・・どうしていいか分からなくて。」
 
「牧野・・・・。 嵌められたな。」
 
「え?」
 
「あーあ。 やられちまった。」
 
「何?」
 
「俺と牧野をくっつける作戦?」
 
「何それ」
 
「いいから、席について食事でもしようぜ。 
せっかく総二郎と類が予約してくれてたんだからな。」
 
「う、うん・・・」
 
 
 
 
こんな具合で、私と美作さんのディナーが始まった。
 
今まで何人かと一緒ってことはあったけれど、美作さんと二人きりでの
食事なんて、実は初めてだったりしたので緊張しまくり
 
それはそうだろう。 
友人という気持ちしかなければ、別に意識することもなく、楽しく会話をして、
美味しく食事が出来たんだから。
 
私は一人で勝手に美作さんのことを好きになっているから当然、
ドキドキしっ放し。
 
 
そんな私を、美作さんは目を細めて微笑みながら見ていたなんて・・・
気づかなかった。
 
 
 
 
「牧野、この後どうする?」
 
「この後って?」
 
「飲みにでもいくか?」
 
「えー、私お酒弱いよ。 知ってるじゃない。」
 
「たまにはいいだろ? 
俺がついててやるからさ。 大丈夫。 ちゃんと面倒みるし?」
 
「じゃあ、少しだけね。 少しだけなら付き合うよ。」
 
 
 
 
こんな流れで、美作さん行きつけのバーに連れていかれちゃった私。
美作さんが一緒だから、と気が大きくなっていたと思う。 
初めて飲むカクテルが美味しくて、ついついグラスが進んでいったのは、
予想外の出来事。
 
美作さんも、私がこんなに飲むなんて想定外だったみたいで、
早めに店を出てくれたんだ。
なのに、私ったら、これでもうお別れなのかと思うととんでもない寂しさに襲われて、
ギューッと美作さんにしがみついてしまった。
 
自分でもこんな行動するなんてビックリだったよ。
でも、これが私の本当の気持ちだったんだよね。
 
好きな人と離れたくないって、どんどん想いが募っていってしまう私の気持ち。 
決して許されない恋だから・・・・
 
 
お酒の力も手伝って私は少し大胆になってしまったのかもしれない。
 
 
 
女性に関してはベテランの美作さん。 
こんな私の分かりやすい態度を、受け止めてくれたんだ。
 
タクシーに乗って向かう先は、私のアパート。  
 
 
 
・・・・・・ではなくて、ホテル。