「では、先日ご提案頂いた静岡と山梨のプランでお願いします」
電話で俺はフロムトラベルの志田さんに、そう伝えた。
志田さんから提案してもらった静岡と山梨方面を組み合わせた旅行プランを社内に回覧したところ、文句なしの１番人気だった。ようやくプランも決まり、俺は心の底からホッとしていた。
良いプランを提案して頂いて本当にありがとうございます！ と合わせて伝えながら、俺は気になっていた事を志田さんに質問した。
「確かに都内からだと静岡も山梨も西ですけど……、どうしてここまで上手く組み合わせられたんですか？」
すると志田さんは答えてくれたのだが、その理由はすぐには分からなかった。
「貸切観光バスを使って移動してますからね。移動するスピードがあるので組み合わせが出来るんです」
えっ？ 貸切観光バスはスピードがある？ スピードなら電車の方が速いんじゃないの？
「確かに純粋にスピードを比較すれば、観光バスは飛行機や電車には勝てません。ただ、一度に大勢の方を最短距離で移動させることが出来ます。もちろん移動する距離にもよりますが、結果的に速いんです」
でも渋滞に巻き込まれる事もあるし、観光バスがとても速い乗り物とは思えなかった。今一つ理解出来ないでいると、志田さんは続けて話してくれた。
「観光で訪れる場所は、決して交通の便が良い場所とは限りません。むしろ交通の便が悪い場所が多いくらいです。電車で移動すると乗換の時間を考えなければなりませんし、待ち時間がある程度かかってしまうんです。観光バスでしたら移動している間に乗り換える事もありませんから、団体で移動するには効率的なんですね」
なるほど！ そういう事か！ ようやく理解が出来た俺だったが、続けて志田さんはこんんな話しを続けて来た。
「ところで今回の旅行なんですが、添乗員は同行させますか？」
添乗員？ 確か今回の旅行にはバスガイドさんが同行してくれるって志田さんが言ってたけど……、そうじゃなかったのか？
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“一生に一度”を旅でデザインする感動トラベルプランナーの須田 久仁彦です。ついに旅行プランも決定し、初野君もホッとしいているようです。
団体旅行に欠かせない存在の一つが貸切観光バスです。その最大の利点は何といっても志田さんが語っていたように、一度に大勢を効率的に運ぶことが出来ることです。
他にも話しの中では触れられていませんでしたが、プライベートな空間も確保されます。他のお客様の目を気にせず、自分たちの団体だけで自由に過ごせるのも大きいです。
また宿泊を伴う場合ですと荷物も多くなりますが、観光バスでしたらその荷物を積んだまま移動や観光が出来るのも大きなメリットになります。
さて、次回は初野君も疑問に思った「添乗員」についてです。「添乗員」とは何者なのか？ バスガイドとはどこが違うのか？ 意外と知られていない添乗員の仕事について書きたいと思います。