再現答案
第1.設問1
1.小問⑴
証拠①②によると,Vは,令和2年2月1日午後9時50分ごろ,V方1階居間中央にある応接テーブルの西側約1メートルの位置で,大量の血を流して倒れていたところをBに発見されたことが分かる。
そして,この応接テーブルにはAの指紋が採取されている。また,証拠⑤から,Bは,同日午後1時45分ごろに,応接テーブルを全体にわたり拭き掃除している。そして,Bは,同日午後2時頃から午後9時45分頃まで外出している。また,Bの知る限りでは,AがこれまでV宅に立ち入ったことはない。そうだとすれば,本件Aの指紋は,Bが外出中に付着した可能性が高い。
また,証拠⑤から,Aは昔,Vから雇われていた者であり,解雇後も何度もVを訪ねては,再雇用するよう求めていた。さらに,同年1月27日夕方には,AがVを突き飛ばすようなこともあった。
以上の事実を踏まえると,同年2月1日のBが外出中に,Aは,V方に上がった際に,応接テーブルに指紋が付着したと可能性が高い。そして,AがVを刺殺したことも一定程度推認できる。
もっとも,仮にAがV方に上がっていたとしても,Bが外出している時間は約8時間にも及び,必ずしもAがVを刺殺したとは言い難い。
これらの事情から,検察官は推認力が限定的であると考えた。
2.小問⑵
証拠⑦⑧から,AはCとの通話中に,「むかついたので人をナイフで刺した。刺したナイフは,高校の近くのM県N市O町にある竹藪に捨てた。」旨の内容を話している。
そして,証拠⑨から,Cの供述に基づき,警察官が同所を探索したところ,血痕がついた刃体の長さ約15.5センチメートルのナイフを発見している。さらに証拠⑩からナイフに付着していた人血は,Vのものであることが分かり,証拠⑪から,Vの死因は,ナイフで深さ約15㎝刺されたことによるものであったことが分かる。
以上より,Vは,このナイフで刺し殺された可能性が極めて高い。さらに,このナイフがAの通話内容と一致している場所から発見されていることを考えると,Aがナイフを捨てた可能性が極めて高い。そして,犯行に使われたナイフは通常犯人でないと所持しているものではないから,Aの犯人性が強く推認される。
これらに上記の証拠①~⑤までの証拠も併せて考えることで,検察官は,Aの犯人性を十分に推認できると考えた。
第2.設問2
1.小問⑴
⑴弁護人は316条の15第1項柱書に基づき,類型証拠開示請求として,犯行が行われた時刻頃にV方からの物音を聞いた者がW2のほかにいるならば,その者の供述録取書の開示を請求する。
⑵そして,同条3項1号イに基づき,証拠の類型として,同条1項6号,識別情報として上記の情報を明らかにするべきである。
さらに,同条3項1号ロに基づき,W2の供述が信用できるかは,Aの防御にとって必要であり,その証明力を確かめるため必要もあることを明らかにすべきである。
2.小問⑵
検察官は証拠⑥がAの防御にとって重要であり,かつ開示によって生じる弊害は少なく,相当性が認められるとして開示をした(316条の15第1項柱書)。
具体的には,Aは現在勾留中であるから,V方の西隣の住民W1の供述を開示したとしても,同人に威迫等を加えて罪証隠滅をするおそれは少なく,弊害は少ないと判断した。
第3.設問3
Cの証言の内,Aの通話内容の部分は,公判廷外の供述であり,その内容の真実性が問題となるため,伝聞証拠であり,証拠能力が認められないのが原則である(320条1項)。
もっとも,324条1項,322条1項の伝聞例外にあたれば,証拠能力が認められ,裁判所は証拠排除決定をすべきでない。本件通話部分は,Aに不利益な事実であるが,CとAは高校からの友人であるから,任意性が認められる。よって,伝聞例外にあたる。
したがって,裁判所は,証拠排除決定をすべきでない。
第4.設問4
弁護人は保釈請求をすべきである。89条の権利保釈は,1号にあたり,認められない。
もっとも,90条の裁量保釈は認められる。結審後であり,判決宣告期日を待つのみであるから,罪証隠滅のおそれはなく,Aが父親の葬式に出席できなければ,社会生活上の不利益を負うことになるからである。
また,勾留取消を請求(87条)すべきである。本件では,上記のように勾留の理由・必要がなくなっているため,これは認められる。
以上
雑感
民事実務,刑事実務の順に解きました。刑事実務の設問1で時間を使いすぎてしまい,設問2以降は時間が足りなくなりました。そのため,浅くしか検討できていません。特に設問3では,要証事実すら認定していないため,低い評価を受けると思います。
自己評価としては,D答案だと思います。民事実務が,C-D答案だと思うので,法律実務基礎科目の評価としては,Cくらいにになる思います。