かつて、私は完璧だった。


♯の完璧少女伝説。

友達からは雲の上の存在として見えていた。らしい。

今日聞いた。


運動万能。

頭脳明晰。

容姿端麗。


手先は器用だから

字だって絵だって入賞する。


標語だって作文だって

怖いくらい入賞する。

なんだって、

軽々と1番をとってやった。


いつの間に有名になったのか、

知らない大人が私の名前を知っていた。



幼い私はみんなを飛び越えている

優越感に浸っていた。



なーんてね、嘘。

軽々なんて、ムリ。


すべて裏で涙と汗を流しながら勝ち得たもの。

表には決して努力してるとこは見せなかった。

究極の負けず嫌い。



周りからすごいって思われたかったから、

謙虚に生きていた。


鼻にかけて自慢はしないように気をつけ、

謙虚に、静かに、抑えて抑えて生きてきた。

だってそれが一番だと思っていた。



友達からの期待も

先生からの期待も

家族からの期待も


一身に背負って

期待を裏切らぬよう

頑張ってきたの


なんてことない私が

特別な私を保っていられるように。



それに


一 体 な ん の 意 味 が あ っ た ?



いつかはみんな忘れてゆくのに

そんな簡単なことを私は忘れていたんだ



母親は、これだけ頑張った私を

認めてはくれなかった。


何のために頑張ってきたって、ねぇ、

母親に愛されるためだよ。

意味なかったじゃないのよ。


本来の私をどこに置いてきたのか

わからなくなっていた。


抑えすぎた心は、

思いを誰かに伝える術を知らないどころか、

押し殺す術を知りすぎてしまった。



そうやって、心の血の絵の具で描いた

自画像は

とてもキレイに仕上がった。



誰もがキレイだと、当然の様に言った。



どんな苦労があったかなんて

この色にどんな意味があったかなんて

どうやって作った色かなんて


そんなこと誰も考えずに、

もともとその色であったと疑わずに、


キレイって感想を言うだけ。