傘一つ、刺身一切れ魚店の店先でマグロの解体ショーをやるといって、店員が鐘を鳴らしているが雨のため客の集まりが悪い。同情し、足を止めて見ていくことにした。しょうゆを浸した小皿にさばいたマグロをのせて配られ、僕にも回ってきた。当然おいしい。しかし陳列窓に映った僕の顔は美味のためニヤニヤしていて、連れのいない三十路の男のそれは極めて不気味である。