ペアルックに否定的ではない。家族にしろカップルにしろ、どちらかといえばほほえましく思う。もっといえば自分がしてみたいとすら思う。

タバコ店の前にある灰皿は道路に面して、歩行中の僕は足を止めて寒空の下でタバコに火をつけた。行き交う人を眺める。夫婦と思しき男女が子供を二人連れていた。男は30代後半でひげをたくわえ、モンクレールのダウンを着ている。彼女は30前後で体が細く、モンクレールのダウンを着ている。彼も彼女も顔立ちが整っていた。ペアルックに寛容といえどこれはいけ好かない。高い服を着て、オシャレ然として、幸せな家庭。人生とは選択の繰り返しである。ことごとく失敗のほうを選んでしまえと、そう心でつぶやいた。