ターミナル的な駅で電車は長いこと停車していた。ホームは賑わっているが車内は空いていて、僕は座席にて、流れる人並みを見ていた。細身の、白いコートに黄緑のニットと同色のハンドバッグを持った女性が目についた。30代の半ばから後半だろうか。その後ろを歩く40歳前後の男性は、白のレザーのジャケットに黄緑のシャツをあわせている。これは確実に連れだろう。
男性のほうが立ち止まり、ホームにある駅の案内図を見て立ち止まった。そして前の女性を呼び止める。振り向きざま、眉間にしわを寄せた。声は聞こえないが、彼の口ぶりからして穏やかさはうかがえない。おそらく現在二人は険悪なムードに違いない。お揃いの格好にもかかわらずピリピリした雰囲気をかもし出しているというのは滑稽であることを知った。シチュエーションコントに使えそう。