スパイダーマン3 悪意のない人間はいない。善意しかない人間もいない。拡大公開の映画は、劇場に行くことが非日常的であるかに思わせる観客が多いように思え、ジュースやポップコーンなど売店でしこたま買って劇中も音を立ててそれらをむさぼり、また途中で席を立ったり携帯電話の液晶を光らせる輩も複数いて、僕は悪意をばら撒きたくなって観賞後は眼光鋭く与太歩きで無差別に威圧する。

黒い、スパイダーマンスーツを身にまとうようになってからのピーター・パーカーの所業が痛快だった。憶測だがサム・ライミはスパイダーマン、ピーターの人間味をフィーチャーして作品に取り組んだのではないかと察し、本作はそれが如実に現れていると感じた。悪意がないと共感しづらい。

親友だったハリーはスパイダーマンを親の敵とみなし、ニュー・ゴブリンとして立ちはだかる。ピーターの伯父ベンの殺害容疑がかけられているマルコは脱獄して逃亡中にサンドマンとなり、病気の娘の治療費を得るために強盗を繰り返す。カメラマンのエディはダークサイドのピーターに恥をかかされ、職を失い、募った恨みからヴェノムに変身して復讐を誓う。敵視にも理由があるためそれぞれに移入する。嫉妬心が強く、嫌な女丸出しのMJもまた愛おしい。前2作をまとめる集大成的な位置づけゆえ、盛り込みすぎて散漫になった嫌いは否めないが、それは些細なこととしよう。