高台の、閑静な住宅街に囲まれた公園にヒロシを背負って行った。それなりに広いが遊具は少なく、親子連れをちらほら見る程度で練習に適していると思ったのだった。今日は天気が良く4月か5月並の陽気で、パーカーを脱いでTシャツ1枚になろうか悩む。習ったリズムを一通り奏でたところで、派手な眼鏡をかけた初老の女性が近づいてきた。「鳴らしてよ」と、おおせのままに刻むと彼女は踊りだし、二人で笑った。

気分が高揚したのも束の間、次に声をかけてきた中年女は未見と額にしわを寄せている。「すみません、やめてもらえますか」なんて吐き捨てられたら帰る他ない。「禁止されてるんで」ともいわれたが、そんな注意書きはなかったと思い、再度確認すると案の定ブラフをかまされていた。閑静マダムが明日から腹痛に苛まれることを願ってやまない。