度を超えたマゾヒストの地獄絵師が自らの住む世界と生い立ちを話す。10ページ前後の短編を主人公の語りによって繋ぎ、その短さゆえ凝縮された地獄は終始テンションが高い。狂っていながらも道理が通っているからなお怖い。

常軌を逸した様子を、自らを省みて客観的な視点をも持っている。登場する彼の周囲の人間が、それらも一人としてまともではないのだが、彼が理想像として創造したものであるということがクライマックスで描かれた。

描写で訴えかけるだけでなく、読者も世界へ引きずり込もうとするラストが強烈。全て地獄行きだ。

日野 日出志
地獄変