何にでも意義を求めようとするのは良くないと思っていながらも、つい理屈をこねたくなり、大した知識も価値観も持っていないのですぐ袋小路に入る。ギャランティーが半端ではない俳優を起用して実写で撮影し、それをわざわざ膨大な時間と手間をかけてロストコープすることにどんな効果が表れるのかと。ジャンキーな登場人物とドラッギーな世界を描くためだけにこの手法を起用したのではあるまい。
麻薬にまみれた近未来のアメリカで、覆面捜査官のボブは元締めを突きとめるために自らジャンキーを装い、どっぷりとはまった人間たちに潜入した。しかしミイラ取りがミイラになり、大きな渦に巻き込まれていく。主人公のボブをキアヌ・リーヴス、ボブの恋人で謎の多い美女ドナをウィノナ・ライダー、中毒症状はそれぞれ演じ方が違い、その中で最も光っていたのはボブが危険視していたバリス役のロバート・ダウニーJr.だったと思われる。経験がそのまま反映されたような、アニメーションで上塗りされているのならやり過ぎぐらいが具合良い。彼のためのロストスコープだったのか。
エンドクレジットでは原作者フィリップ・K・ディックの、中毒仲間に捧げる形でその彼らの名前と末路が記された。リチャード・リンクレイター監督といえば「スクール・オブ・ロック」のエンドクレジットが忘れられない。