魚の小骨が右下の歯に挟まって取れない。爪楊枝も歯ブラシもデンタルフロスも玉砕した。歯だけに、歯が立たなかった。今までこんなことはなかったのに、歯茎が痩せてきているのか。それが気になって仕方なく、舌でそれをまさぐっている。かれこれ数時間、挟まったままである。捕らわれすぎて他のことに集中できない。舌は常に右を指し、感覚がなくなるまで舌先で押したところで取れるわけもなく、分かっていても止められず、危うく痙攣するところだった。
もう一人の、小さい自分が存在したらしたいこと。口に入って小骨を取る。耳に入って掃除する。背中に回って太い毛を抜く。
もう一人の、小さい自分が存在したらしたいこと。口に入って小骨を取る。耳に入って掃除する。背中に回って太い毛を抜く。