共通の友人の結婚式で打診されたスピーチを正式に要請されて、これが予想以上に僕を悩ませている。考えてみたら大勢の人の前でマイクを持って喋ったことは人生において一度もない。まずはその類のマニュアル本を買った。こういったものは形式ありき。奇をてらわず無難にこなそうと、しかし器の小ささがそれを阻む。あがって、とちって、どもって、どっちらけの光景が見える。1つ目のエピソードでウケを狙い、それを踏まえて上手いこと繋ぎ、2つ目で感動を誘おうとしたら与えられた尺を大幅に超えてしまいそう。理想ばかり追って肝心の中身が伴わない。