江戸川乱歩といえば明智小五郎だったなと、鑑賞中に思い出した。というか気づかされた。下男の役の大木実に違和感があったが、結局は招待を明かすまで分からなかった。精神科に監禁された医大生・人見広介の一人称単数から始まり、後半から登場する小五郎が謎を解いて締める。その間にも様々な要素が詰まって、乱歩の諸作を紡いだ結果は混沌としてかつエキセントリックだった。
幼少の記憶が断片的で、牢の中にて広介は子守唄と断崖絶壁の海がよみがえる。ルーツを探るべくその道中で自分に瓜二つの菰田源三郎という人物が死んだと書かれた新聞を読み、その地へ向かう。盲目の按摩の話によると源三郎の父親は近くの無人島に妻と二人で桃源郷を作っているという。広介は生き返った源三郎として裏日本の盟主と名高い菰田家に潜入した。内部事情が明らかになる内に奇怪な事件が起こる。
源三郎の父・丈五郎は手に水かきがあり、奇形と蔑まれていた。彼は無人島を国家として健常の人間を改造し、奇形に生まれ変わらせて洗脳、調教している。美醜が大きくものをいう風潮は、表面的で薄っぺらだが世の常である。花火とその音、手が繋がれた肉片と“おかーさーん”とこだまする声が美しかった。やはり見た目か。