黒い十人の女 テレビ局のプロデューサーである風は仕事がらみで9人の愛人を作る。妻と合わせて10人の女がいて登場人物がごっちゃになる。キャストを調べていて分かったことがあった。岸恵子が演じる女優で古い妾は市子。山本富士子が演じる本妻は双葉。宮城まり子が演じる印刷会社を営む未亡人は三輪子。中村玉緒が演じるコマーシャルガールは塩。岸田今日子が演じる局の同僚は五夜子。以下同様、10人の名前に数字が入っている。新たに接触しようとした新人女優百瀬桃子という名前だった。風にとって彼女たちは氷山の一角に過ぎない。

優しいだけがとりえの男を、女たちは切ることができない。別れたところで風はまた別の女を口説いて、彼にとって支障のない日常が続く。いがみ合っていた彼女たちは団結して殺す計画を立てた。その話が風に漏れて、彼は妻の双葉に自分殺しを逆手にとった計画を持ちかける。

軽薄で無責任なのは現代社会を生き抜く術であると風は自己弁護する。ここでいう現代とは1960年代だが、全く変化のない時代などなく、新人類は常に現れている。今となっては特にめずらしくない人種で、弱い男と強い女という関係もこの頃からだろうか。計画の後、女たちがとった行動はそれぞれ理解できない。そんなことだから女心が分からない。