年をとった鰐 ワニは無償の愛を捧げたタコを食べてしまった。昼はタコが餌を与えてくれ、夜はそのタコの足を1本ずつ食べる。自分の足は12本あると自慢していたタコは12日後、最後に残った体をも飲み込まれた。

良心の呵責に苛まれながら、しかし欲望には勝てなかったワニ。何ておいしいのだと涙する。気づかぬうちに足がなくなり動けなくなったタコは、初めてワニに餌をとってきてもらい、幸せな気持ちだった。そしてまた気づかぬうちに、消えることになる。勧善懲悪の逆をいくようでその実、2匹の感情はそのまた逆だったように思う。レオポルド・ショヴォーの原作をアニメーション化し、シンプルなモノクロームと無垢な眼差しが皮肉を際出させた。

山村浩二が選んだショート・アニメ7本はどれも秀逸で、その作品はもとより、アニメーターの出身地もイスラエル、インド、エストニアなどバリエーションに富んでいる。地球の生物進化をビーズで描いた「ビーズ・ゲーム」は、殺すことや食すことに焦点を当て、さながら小宇宙だった。「アリの冒険」は露出を絞ったような映像を見せる。風に吹き飛ばされたアリが家に帰るまで、途中で挿入される陽の落ち加減が抑揚をつけた。猫のようなキャラクターが主人公の「おとぎ話」。そのキャラの頭が悪い様子は万国共通の笑いを提供し、後半からは一転してリズミカルでシュールなストーリーが展開される。

アニメを劇場で見るなんていつ以来だろうか。想像力を揺さぶるのにこれほど有益なものはないと、素晴らしい足がかりだった。