カクテルシーソー 縁故があってチケットを手に入れた。急きょ今季初めての中日戦観戦になり、そういえば僕が見に行って勝った試合はしばらくなかったなと、悪い予感がする。一塁側のため、おとなしくしようと思っていた。

一進一退の攻防で、昔YoYo はヤクルトファンだったらしく、喜ぶポイントが間逆。斜め前に座っていた中年男性は人の良さそうな顔をしていたが熱狂的のようで、拍手の音が高らかだった。徐々にビートアップして僕も前面に出す。8回の集中打にはボルテージが最高潮に達し、それとは対照的にその男性とYoYoは静かになっていった。球場で歌う“燃えよドラゴンズ”はやはり格別だ。

試合後も余韻に浸って神宮に残っていると、外苑前の駅はメガホンやら傘やらを持った人でごった返していた。時間つぶしがてらカフェに入ろうと思い、246号を渋谷方面に歩いた。しかし時間的にどこも開いていない。そうこうしているうちに表参道に着いて、渋谷まで1駅なら歩いてしまえということになった。前を行くカップルはこの遅い時刻に乳母車を引いて、男性のほうは背中に“WOODS”と記された背番号44のTシャツを着ていて親近感が湧く。「タイロン」と叫ぶと彼は振り向いて、互いに手を振った。嬉しくなってこの喜びをYoYoに伝えようと彼女のほうを向いた。距離を置いて他人の振りをしている。