緻密な密室群像劇。第二次大戦前夜のフランス上流階級で繰り広げられる恋愛模様は複雑に絡み合い、刹那的享楽をむさぼるような彼らははかなかった。
ロベールの公爵夫人クリスティーヌは飛行士のアンドレと恋仲にあり、それは社交界で周知の事実だった。ロベールも不倫中で、それを清算すべく狩猟パーティで全員を集めた。アンドレに言い寄る女や、クリスティーヌを口説く男も現れ、欲望が渦巻いている。さらにはクリスティーヌの女中リゼットも移り気であり、夫で密猟監視人のシュマシェールの仇であるマルソーと浮気を企んでいた。揃いも揃って昼は屋外で兎や雉のハントを、夜は室内で恋のハントに勤しんだ。撃ち殺された兎は何匹も執拗に映し出される。ブルジョワは死を楽しむ。ラストでは誤って一人が銃弾に倒れた。「胸に命中して苦しむことなく息絶えた」というせめてもの慰みは、どこかむなしい。ソフィスティケイトされているところで動物以下である。
監督のジャン・ルノワールはそれぞれの間を取り持つオクターブ役としてキャストも兼ねた。滑稽な人間たちを演出し、自らもまたその一人であると。印象派の絵画を売りさばいて製作された彼の作品は計算され尽くされていてルノワール印。