蒲田福の湯 福の湯 大田区蒲田1-12-15

映画「やわらかい生活 」の舞台となった場所。劇中のシーンと同じだと喜び勇んで、道路を挟んで向かいから写真をパシャパシャ撮っていると、その後ろの飲食店から主人らしき人が出てきて声をかけられた。「映画を見てきたんですか?」これは裏話を聞けるのではないかと、僕は指を立てて「その通りです」と笑顔で応える。案の定、向かって左の部屋が撮影に使われたことや、寺島しのぶの入浴シーンは別の銭湯が使われたことなど、彼はいろいろ教えてくれた。

外観も内装も年期を感じさせる。女湯のほうから「こんばんは」という挨拶が幾度となく聞こえた。憩いの場のような雰囲気で心地良い。2つ隣のカランを使う50代男性は、胸に刺青があった。四字熟語のように見え、彼の目を盗んでチラチラ覗き、それが「○○○組」と彫ってあることを確認した。組員だった。歯の磨き方、シャワーの浴び方、黒光りした大きいイチモツの洗い方、所作の全てが早く、気風が漂う。

映画では蒲田を「粋じゃない下町」と表現していたが、決してそんなことはなかった。異様に熱い湯がまたいなせである。