ピンク七福神の作品は今までいまおかしんじのものしか鑑賞しておらず、「痙攣」(原題は「淫らな唇~痙攣」)の田尻裕司でやっと二人目。奔放に生きるフリーランスの女性カメラマンみのりを通じて、現代人の隙間や焦燥を描き、そこに光を差す。セックスシーンは常に汗を滲ませて、髪が裸体に纏わりつき、ぬめりはエロティシズムを助長させた。人間の、ふとした時に見せる表情、いい顔を切り取るためにみのりはファインダーを覗く。一夜を共にした男に、彼女自身がいい顔を切り取られ、汗による潤いだけでなく、乾いた心もまた水分を得たような。
「言い出しかねて」(原題は「わいせつステージ 何度もつっこんで)は至極のラブストーリー。背が低いことにコンプレックスを抱く腹話術師ダイスケはそれをネタにして、盲目の少女ヒカリは逆境を笑いに変換する精神と彼の声に恋をした。ファンレターを渡そうと楽屋に入った彼女はダイスケを背の高い彼の弟子・ヨウイチと間違える。デートはヒカリとヨウイチと、ヨウイチの後ろからダイスケが喋り、さながら腹話術の状態で進んだ。ラブホテルでヒカリとヨウイチは結ばれ、ダイスケはその横でヨウイチと同じように腰を振る。おかしくも切ない。ヒカリが真相を知った時、またダイスケが彼女の気持ちを知った時、やりきれない悲しさに包まれた。誤解を解き、通いはあったが最後に悲劇は起こり、しかし満たされた思いは永遠に続く。
ポレポレ東中野によるピンク特集はVOL.1ということで次回も期待できる。いつになるか分からないがVOL.2も楽しみだ。