「駆け込み乗車はおやめください」というアナウンスが聞こえたので駆け込んだだが、ドアが閉まる気配はない。電車は混んでいてドア付近に立ち、次の急行を待つ人たちと向き合ったまま、しばしの時間が流れた。その中の一人が男前。しげしげと見ていると誰かに似ていると思えてきて、ますます顔を覗いた。金城武に似ている。彼は、おそらく僕が見ているから、横を向いたり仰いだりうつむいたりしてせわしない。そしてそのどの角度でも金城武に似ているという。背は低く、肌のつやは二十歳前後と思われるので本人ではないだろう。日本にいるかどうかも定かではなく、まさか電車を使うまい。
そうこうしているうちにドアが閉まって発車した。惜しむらくは、写真を頼まなかったことだ。懇願して、タバコかジュースでもおごって、ブログ掲載の許可をとれば良かったと、悔やんでいる。