豊島湯 豊島湯 北区豊島3-19-7

玄関で体長2メートルほどの白虎が迎える。室内にも多数の置物があった。店主は度の厚い眼鏡をかけて、白内障で最近手術をしたらしく、常連客とその話で持ちきりだった。「世の中が明るくなったでしょう」「蛍光灯がまぶしすぎてかなわんよ」嬉しそうに、趣味であろう飾り物もくっきり見えているに違いない。

浴槽は大きくなかった。10人も入らない。電気風呂は低温湯、バイブラ風呂は鉱石湯を兼ねて効率的に。低温の風呂は長く浸かることができて重宝する。ここのは三人入るとかなりきつそうで、刺青と初老の先客二人に悪いと、そこは後にすることにした。

歯を磨いてから再度目をやると、刺青のほうがまだ入っている。とりあえず隣のバイブラで様子を見た。彼は下半身、太ももから股間の辺りをひっきりなしに掻いていた。場所を特定できないのは、当然、背中の紋々が関係する。凝視できない。もしその掻いている箇所が股間であれば、菌が怖い。ヤクザと同じくらい怖い。最悪の状況を想定して、彼が出ていってからも低温湯には入らないことにした。