30歳の高峰秀子が、瀬戸内海の小豆島に赴任してきた教師・大石久子の19歳から45歳までを演じきる。満州事変から第二次世界大戦終結まで、彼女と彼女の最初の教え子12人の目を通して激動の時代を見る。
分校の1年生を受け持った親任女教師の大石は、貧しく厳しい生活の中で喜びを見つけるべく、幼い生徒たちと接した。彼ら12人、24の瞳はまだ汚れを知らず、また瞳の生涯を振り返るとその時が最も光り輝いていた。唱歌を歌い、野山を駆け巡る。彼らにとって学校は唯一の楽しい場所だった。大石が足を負傷して学校に来られなくなると、12人は遠く彼女の家まで見舞いに行った。その際に撮った写真が忘れられぬ思い出となる。
怪我のため大石は分校から本校に移るが、5年後に12人も6年生になって本校に来て再会を果たした。しかし日本の情勢は悪いほうへと進む。奉公に出される子、一家で夜逃げする子、肺病で死ぬ子、戦死する子。大石は戦争に否定的で、主義主張を貫こうとする姿勢が、共産主義者の疑いを招いた。正論が赤に結びつくとは皮肉だ。彼らの卒業後、教職に嫌気がさした彼女は仕事を辞めた。病床で皆が写った写真を潤ませながら見る元教え子がいた。その子を見舞いながら大石は自らの無力さを知る。望む進路に進めない瞳にも、かける言葉が見つからない。
その後、大石は再び教壇に立った。24の瞳の娘や息子が教室にいる。同じ教師になった瞳もある。同窓会が開かれて、戦争によって失明した元教え子が、かの写真を指でなぞった。それだけは見えると誇らしく、どこに誰がいるかを言い当てる。
1年生時と6年生時で12人は当然成長するのだが、彼らは面影を残していた。全員、似ている兄弟をキャスティングしている。この力の入れよう。文部省推薦の大作の名にふさわしい。人生は辛いことのほうが多い。彼らにとって楽しかったことはわずかだった。時間にして2時間半強、そのうち半分は分校時代だった。戦後は駆け足だが輝ける日は刻み込まれて、それを抱きながら悲しみを乗り越えて生きる。