ビーチでボサノバ、ロマンスでタンゴ、サッカーでサンバ。ブラジルには音楽が流れている。スラム“神の街”は生と死が隣り合わせで、年端のいかない子供まで銃を持ち、年齢による実力が拮抗する。黒人の、しなやかな筋肉は常夏による汗で濡れて光り、褐色に映える白目と歯が際立つ。

カメラマン志望のブスカペは銃が怖かった。兄のマヘクは街で最も有名なギャング3人組の一人で、父親に勘当されながらも強盗して手に入れた金をブスカペに渡す。この地では血の繋がりが何よりも濃い。3人組の取り巻きだったリトル・ダイスは野心家で、体が成長しきってない時から既に殺しを経験する。欲望に身を任せる彼はリトル・ゼと改名し、親友のベネと共にのし上がって街を支配するようになった。ブスカペは彼と何度も顔を合わせているが「お前、名前は」とその度に名乗らされる。“神の街”のそんな一般市民として、ブスカペが見るブラジルの60年代から70年代を映した。

賄賂がまかり通り、皆が自衛しなければならない。持たざる者は淘汰される。細かいカットと手持ちカメラで臨場感のあるリズムで、監督フェルナンド・メイレレスはブラジルの現状を突きつける。実話を基にしているという。映画によって明るみに出す。